第2話 2020年1月9日

「ほら、いつまで寝てるの。学校行くよ。朝ごはん食べなきゃ」


 全くわけがわからないまま、私はお姉ちゃんに連れられて一階に降りた。


 初めは夢かと思った。お姉ちゃんが生きている夢でも見たのかと舞い上がった。


 しかしこの夢。一向に冷めない。


 というか、まるで昔のことをなぞっているような気がした。


 カレンダーの日付は2020年1月9日。ちょうど1年半前。


 ニュースも、どこかで見たことのある内容。


 教科書には4年2組というクラス名。やっぱりちょうど1年半前だ。

 

 夢なら覚めてほしい。いや、覚めないでほしい。


 夢は覚めなければタイムスリップと同じだ。


 この夢の中では、お姉ちゃんを助けられるかもしれない。


 このウイルスを食い止めれば。私はお姉ちゃんと離れずに済むんだ。


「どうしたのよ。ぼーっとして」


 お姉ちゃんの声に、なんでもない、と笑顔で返した。


 今の私は普通の小学4年生。


 ただし、この先の1年半。何が起きるかを知っている。


 絶対諦めない。


 お姉ちゃんは私が助けるんだ。

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