小学生がタイムスリップしてパンデミックを阻止しようとする話

ここプロ

第1話 お姉ちゃんが死んだ

 お姉ちゃんが感染症で亡くなった。


 行われたお葬式。お姉ちゃんは棺の中で、ただ眠っているように見えた。


 大好きだった。


 ほんの少し前まで一緒に遊んで。一緒にご飯食べて。一緒に笑って。


 これからもずっとそうだと思っていたのに。


 原因は世界中に広がったウイルス。お姉ちゃんはまだ20歳になったばかりだった。


 このウイルスによる20代の国内での死亡例は1%未満。


 どんな最後でもそうだけれど、不幸としか言いようがなかった。


 お医者さんは、最後にお姉ちゃんが残したメッセージを私たちに伝えてくれた。


 家族の一人一人へ。最後の力を振り絞って伝えたメッセージ。


「負けちゃダメよ。何があったって、最後まで諦めないんだよ」


 それが私へくれたメッセージだった。


 メッセージなんていらないよ。お姉ちゃんの方が大事だよ。



 ——もしも昔に戻れるなら。私がパンデミックを食い止めてやるのに。



 そうしたらお姉ちゃんは死なずに済んだのに。


 一日ずっと、涙が枯れることはなくて。


 葬儀の終わった夜、そんなことを思いながら眠りについた。


 


 目が覚めた時。


 ベッドの横には、死んだはずのお姉ちゃんの姿。


 私は2020年1月9日の朝にいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る