第2章 王都ファキーリア
記憶
海が燃える。
夕陽を映しているわけでもないのに。
海面に浮かぶ油を炎が伝って、
小さな島を覆う炎の壁になる。
冷たく優しい青も、
熱く柔らかい白も、
今は熔ける直前の金属の色。
蒸発する海水の匂いと油の匂いが混ざって胸が悪くなる。
赤い火、青い火、黄金色の火。
息をすればそれだけで、気管も肺も灼けつきそうだった。
黒い柱が何本も焔色の海から生えて。
気が遠くなるような熱と陽炎。
世界は、油の中に沈んでいる。
――誰か! 誰かいないか!
誰か呼んでいる。
親父か、それとも兄貴。
そんなはずはない。
二人とも、もう。
――子供がいる。まだ生きてるぞ。
誰かが体を持ち上げた。
痛い。でも熱い地面が遠ざかって、少しだけ呼吸が楽になる。
――ここは危険だ。逃げるぞ。
待って。待ってくれ。
俺の家族。俺の島。
――こら、おとなしくしてろ。助けてやるから。
違うんだ。
俺だけじゃないんだ。この島には。
――精霊暴走か。とんでもないな。
――これが暴走……。これが精霊の力? 本当にこんなものが我々の切り札だと言うのか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます