第28話 おっぱい海賊団のお仕置き

 「どうだおっぱい皇子!新しい【南方艦隊】の船の速さはよぉ!」


 リューゲン島の停泊地を続々と出港していく小型船約60隻。


 その中でもひときわ大きい旗艦、ドレスデンにオレは乗船していた。


 【翁っぱい】こと指揮官であるカールハインツと船の中央で仁王立ちし、前方の海を油断なく見張っている。


 今のところ敵の気配はなかった。


 「すげえな!帆もねえのにどうやって動いてんだ?」


 「がはははははは!ロリ狐によると、エルデネトの【外輪船】の技術を転用したらしいぞ!火を原動力とする小さな羽が船底でぐるぐる回ってんだとさ」


 どの船の船尾にも【南方艦隊】の女性兵士1人がいるのはそのせいか。


 備え付けられた四角い鉄の炉に薪をくべて炎を起こしている。


 あれで小さな羽とやらを動かしてるらしい。


 短期間で敵の技術をザールラント風にアレンジするとは、アデリナもなかなかやるじゃないか。


 「す、すごい~~~~!まるでクジラに乗ってるみたいだね、エミーリアさん」


 「はい。これなら、エルデネトの軍船も追いつけないでしょう」


 同じくドレスデンに乗っている2人のおっぱいも感動している。


 このままどこか遠い孤島でバカンスにでも…と行きたいところだが、今は使命を果たさなくちゃな。


 「お。見えてきたぞ皇子!」


 カールハインツが叫ぶ。


 その先には―、




 【リューゲン漁場】で好き勝手操業するエルデネト帝国の船百余隻がいた。

 

 漁船と言っても【南方艦隊】の船の数倍の大きさがあり、よく見ると武器を携えた者もいる。


 半ば軍船を兼ねてるといっていいだろう。


 これみよがしに網を張り、漁場の魚を丸ごと乱獲しているのは、挑発を兼ねているから。


 もしザールラント王国が攻撃して来れば応戦し、あわよくば撃退し、この地域の領有権を確定させるつもりなのだ。


 もちろん、そんな目論見を成功させるつもりはない。




 ここはリューゲン島ならびにザールラント王国が数百年守り続けた海なのだから。


 「さ、そろそろやるぞじじい」


 「おう、早く暴れたくてうずうずしてくるわい。全艦全速!あの礼儀知らずの侵略者の鼻先まで突っ込んでいけ!」


 ドレスデン後部の炉が火を勢いよく吹き、にっくき漁船どもの鼻先へと迫る。


 船の上で操業するエルデネト人とオーク兵の黑目まで見える距離まで近づくと、一斉に散会。


 持ち前の機動力を生かし、数で勝る漁船たちを包囲する体制を取る。


 「な、何者だ!」


 「ザールラント軍の船か!?」


 「テキカ?」


 「コロシテウミニナゲステロ!」


 すでにちらほら武器を構える奴もいて臨戦態勢。


 本当の漁師は数えるほどしかいなさそうだ。


 「エルデネトの火事場泥棒ども、よく聞けぃ!」


 動揺するザールラント人どもの前で、オレは叫ぶ。

 




 「オレたちゃ最近結成した海賊【ユルゲンとおっぱいな仲間たち】だ!さっさと船及び有り金置いて出ていきな!!」

 

 


 「か、海賊だとぉ?」


 すぐ側の船に乗っているエルデネト人が素っ頓狂な叫び声を上げた。


 他の船でも、控えめだがざわざわと話し声が聞こえる。


 「おおそうさ。今日はうちのシマで好き勝手してるアホウがいると聞いてやってきたのさ」


 「そんなバカな!こんな所に海賊なぞいるはずがない」


 「今できたって言ったろ?とにかくうちのシマを荒らしたケジメは付けてもらうぜ。今すぐ海に飛び込むかオレたちにボコボコにされるか、どっちか選びな!」


 あいつらが漁船を装ってるように、オレたちも海賊を名乗ることにした。


 そっちの方がなにかと都合がいい。


 こいつらが海の藻屑となっても、それはザールラント王国ではなく海賊のせいってわけだ。


 「こしゃくな…この海も陸も、いずれは全てこのエルデネト帝国のものとなる!邪魔をするなら容赦はせんぞ海賊ども!」


 「ヤッテシマエ!」


 「小国ザールラントに帝国の恐ろしさを思い知らせてやれ!」


 どうやら向こうさんもやる気になったようだ。


 停止していた船が動き出し、武器を携えた兵士が続々と甲板に出てくる。






 いっちょ景気よく行くか。


 「ーーーー【風切】かざきり


 いつもと同じ風の刃を生み出すスキルだがー、




 今回は通常サイズの数十倍の奴を出す。


 狙いは、すぐ側にいる偽装漁船。


 音もなく刃は船の中央を通過し、一瞬で真っ二つになった。


 「ぎゃああああああああああ!?」


 「フ、フネガ…!」


 まずは一隻。




 「喰らいなさい!エルデネトの侵略者たち!」


 「お姉さんたちがたーっぷりお仕置きしてあげる!」


 【南方艦隊の】ミニスカ水兵さんたちも呼応し、手に握っていた丸い球を一斉に投げた。


 【震天】しんてんを揺れる海上でも使えるようトリーアの職工が改良した投擲兵器。


 名づけて【リューゲンの怒り】である。


 エルデネト帝国の漁船の甲板にそれらは落ち、数秒後に爆発。


 船員の絶叫と悲鳴。


 海に飛び込むしか逃げる道はない。




 かくして、ザールラント王国とエルデネト帝国初の海戦、【リューゲン漁場の戦い】が幕を開けた。



 

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