第20話 ざまぁSide:潜乳工作員、自らのおっぱいに潜入す

 ふにゅん…ふにゅん…


 「んっ♡ふぐぅ♡んーっ♡」


 ケムニッツ郊外の森。


 黒のミニスカートを履いた金髪美少女が、自らの胸を両手で触っている。


 黒いシャツを口でたくし上げ、小さな掌に収まるサイズの乳房を、ねっとりと愛撫しているのだ。


 時には痛みを感じるほどに強く触り、時には優しく撫でるようにさすり、時には屹立した色素の薄い先端を爪でかりかりとひっかく。


 敏感な貧乳をほれぼれするほど美しい指で刺激すると、傷1つない肢体がビクッ、ビクッ!と震え、少女は口に咥えたシャツを離してしまいそうになった。


 じんわりと、汗とは別の湿り気が広がっていくのを感じる。


 しかしアメリーはやめない。


 (今のペースじゃダメ…この残念ちっぱいをもっと大きくしないと、エミーリアやリンダに…先輩を取られちゃう…♡) 




 彼女が急ぐのには、理由があった。



 ****



 「アメリー・ハーゲンベック!残念ちっぱいの貴様をザールラント王国軍のマジカル司令官に任じるっ!光栄に思えい!」


 ユルゲン・ドナートが南方で暴れていた頃、兄アルバンは新たな動きを見せる。


 彼の片腕と言われた弓使いアメリー・ハーゲンベックを【巨人宮】に呼び出し、大任を授けたのだ。


 「うひひひひひ!素晴らしい人選にございますアルバン王!この女、胸は残念なほど小さいですが腕は確か!反抗的なザールラント王国軍も抑えられましょう!」


 「そうであろうそうであろう!もっと褒めて良いぞツェーザル!ぐわははははは!」


 ぷるぷるぷるっ!


 当然ながら、震えるのはアメリーのおっぱいではなく、ツェーザルのお世辞で喜ぶアルバンの腹である。


 今回の人事もツェーザルにほとんど誘導されたようなものだが、もちろんアルバンは気づいていない。


 内実はともかく、利権を貪りたい大貴族以外からの支持を失った愚王が、新たなマジカル政治改革に乗り出した形となる。











 「嫌です♡」


 もちろん、ユルゲンとの再会に向け貧乳を鍛えているアメリーには、はた迷惑な話であった。


 「…は?」


 「無理です♡」


 「おいどう言うことだツェーザル。あの残念ちっぱいは野人やじんより洗練された貴族の我にメロッメロになりましょうぞ!と言ったのはそなたではないか」


 「こ、こここここれは恥ずかしがっているのです!本当はアルバン王のイケメンオーラとイケボにクラックラのトロットロなのでする!」 

 

 「違います♡」


 「なるほどぉ!小悪魔ツインテールちっぱいに加えてツンデレ…属性の宝庫なのじゃな。ぐわはははははっ!」


 「話聞け♡」


 たっぽい、たっぽい…


 アルバンは玉座から立ち上がり、肉を震わせながらアメリーへと近づいていく。


 「そうツンデレるでない残念ちっぱいよ。最近はツンデレよりもすぐデレて主人公のところにご飯を作りにくる系チョロインの方が流行りなのじゃぞ?ツンデレは反抗的な感じがウケないし、デレるのが遅い故読者離れを起こしやすく、需要が減っておる。それに…」


 舐め回すようにアメリーの肢体を隅々まで観察し、両腕を伸ばす。


 「お主は前々から3番目の妻ぐらいにはしてあげても良いと思っておった。おっぱいが小さいのが残念極まりないが…触ってみると意外と心地よいかもしれんし」


 ぼよんっ!


 アルバンは意外に機敏な動きを見せ、アメリーの元へダイブする。


 「だから残念ちっぱいよ、乱暴なだけの無能弟から離れ、我のものになるのだぁぁぁぁぁ!」


 ひざまづいて顔を下に向けていたアメリーはー、




 無言で【神弓】しんきゅうに弓をつがえた。


 「え」


 「…ったまきた」


 「あの…その…もしかして怒って…あんぎゃあああああああっ!?」


 そして、乱射。


 ひたすらに乱射。


 続々と弓を放ち、アルバンの服の袖に命中させていく。


 「おごおおおおおおおおお!?」


 威力も凄まじい。


 またたくまにハリネズミ状態となったアルバンは吹き飛ばされ、宮殿の外壁に釘付けとなった。


 吹き飛ばされる途中でくるりと1回転しており、アメリーにブヨブヨお尻を向けている状態でもある。


 「あ…あががががが…」


 「安心して、殺しはしない。先輩との約束は絶対だから。でもさ…」


 アメリーはアルバンの元へツカツカと歩み寄る。


 「頑張ってる先輩を平気でバカにするし…それに、さっきから、ちっぱい、ちっぱいちっぱい、ちっぱいちっぱいちっぱいちっぱいうるさいんだよゴラァァァァァ!」


 「き、貴様っ!?」

  

 「こちとら…」


 アメリーは鏃を抜いた弓を手に取り、構える。


 そしてー、










 「毎日気にしてベッドで泣いてんだよぉおぉぉぉお!!!」


 ブスリッ…


 「アッーーーーーーーーーー!!!」


 鏃を抜いた弓で、アルバンのとある箇所を勢いよく貫いた。


 トドメと言わんばかりに弓をぐりぐりとひねる。




 「貧乳の痛みと先輩を馬鹿にした罰…思いしれええええええええっ!!!」


 「いえあthんvしうghsづfhcそいfhそいxじょs!!!お、がぁ…」


 

 アルバンは文字で表現できない叫び声をあげ、気絶した。






 「…いっけない!ちょっとだけキャラ壊れちゃいました、てへぺろ♡」


 アルバンの肉体から弓を引き抜き、アメリーは汚れた矢を投げ捨てた。


 「ま、いっか♡いずれこうなると思ってましたし、ここで先輩の呼び出しを待つ必要もありませんし、どこか近くで待機していればいいんです♡」


 そして、気絶したアルバンと絶句するツェーザルを置いて、王宮を去ろうとする。


 「ま、待てぃ!この偉大なるアルバン王にとんでもない暴行をしおって!このツェーザルが…ひいっ!」


 追いすがろうとした宰相に素早く弓を放ち、その頬を浅く抉った。


 「…あなたは生かしておく理由もありません♡それ以上近づいたら、わかりますよね?」


 「あ、あわわわわ…」


 「じゃ、今日からアメリーはザールラント軍での全ての役職を返上します♡行きたいところもありますし♡」


 「ど、どこへ行くのじゃ…?」


 「決まってるじゃないですかぁ♡」


 窓を力づくでこじ開け、ケムニッツを発つ準備を整える。






 「…先輩のところですよ♡」


 最後にニヤリと微笑み、アメリーは姿を消した。






 「早く衛生兵を呼ぶのじゃ!王が色んな意味で重傷を…何?派遣傭兵は勤務時間が終わったため帰宅した?正規雇用待遇じゃないと残業は受け付けない?なんたることじゃ!」


 彼女を追えるものは誰もいなかった。


 

 ****

 


 (もうだめっ♡おっぱいだけでアメリー…果てちゃう…〜〜〜〜〜〜〜〜♡)

  

 刺激を受けて少し膨らんだ胸を一際強く愛撫すると、アメリーの脳裏に電撃のような痺れが走る。


 体中を痙攣させた後、地面に小さな体をくたりと横たえた。


 「…んぐ♡はーっ、はーっ、はーっ♡やっぱり自分のじゃ物足りない…先輩…早く、会いたいです♡」


 その時、周辺住民の声がアメリーの耳に入る。


 「アルバンが何の罪もない幼女をさらってエルデネト帝国に献上したそうだぞ!」


 「あのやろう…!やっぱりユルゲン皇子じゃないとダメだ!」


 「豚を引き裂いて、ユルゲンさまをお迎えしよう!」


 「ケムニッツで抗議集会を開くぞ!」


 今日もアルバンは眠れない夜を過ごすだろうと、アメリーは直感した。


 「じゃあ、アメリーは、夢の中で先輩に抱いてもらおうっと…」


 いまだうずく胸を軽く撫でながら、王国最強の弓使いは眠りにつくのだった。

  


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