第18話 おっぱい天国

 「エミーリアは子供たちを頼む。あとはオレとジジイに任せろ」


 「はい」


 「じ、時間を稼げ!我はを取りに行く!」


 かろうじて【濁り水】にごりみずから逃れたアルタンは船倉から逃げていく。


 というより、エミーリアがオレのためにわざと残したというべきか。


 好きにすればいい。


 どうせここからは生きて出られない。


 遅いか早いかだけだ。


 「早く来い」


 だから、まずはこいつらを片付けてやる。


 「ヒ、ヒイイイイイ…!」


 「どうした。まだ50人はいるだろ。こっちはおっぱい無職と【翁っぱい】じいさんの2人だけだ」


 「ク…」


 「おっぱい皇子と俺の2人を殺せば皇帝が賞金を弾んでくれるはずだ。今のうちだぞ、がはははは!」


 カールハインツが拳に真っ赤な炎を宿す。


 これまで以上に赤く、まるで血の色のようだ。


 「…かかってこねえなら、こっちから行くぞ?」


 「ヤ、ヤレイ!コロセコロセ!ナグリコロセェェェェェ!!!」


 「「「ウォォォォォォォ!」」」


 オーク兵は【震天】しんてんでは遅すぎると判断したのか、剣を抜いて一斉に走り出す。


 剣の切っ先がオレとジジイに届こうとした時ー、




 「【風圧】ふうあつ!!!」


 「【鬼火】おにび!!!」


 ほぼ同時にスキルを発動。


 1人は拳から悪魔のような姿をした炎人を出して、オーク兵を焼き払う。


 もう1人は、目に見えない風の圧力で、オーク兵を鎧もろともぺしゃんこにする。


 「「「ギャアアアアア!!!」


 たまらず船内に絶叫がほとばしるが、その程度で怯むつりもはない。


 「おらあああっ!」


 怯んだオーク兵を【風切】かざきりで薙ぐ。


 「チェストオオオオオ!」


 ジジイは【火拳】ひけんで殴り倒す。



 

 切り裂く。


 貫く。


 両断する。


 ぶん殴る。 

 

 「シ、シナバモロトモ!グゲ…」


 やぶれかぶれで突っ込む者の喉を刺し貫きー、


 「タ、タスケ…アギャアアア!」


 命乞いをする者を無言で殴り飛ばす。




 戦いと呼べるものはない。


 ただひたすらに、船の中で逃げ惑うオーク兵を殲滅し続ける。 


 あっという間に船倉からオーク兵は消え去り、残るは逃げ出した者のみ。


 それらも全員追いかけ、無言でぶっ倒す。




 気がつけば、船倉から甲板へと出ていた。


  

 ****



 「はぁ…はぁ…やるなジジイ。これだけ派手にぶっ放しても、船にはボヤ1つない」


 「ぜぇ…ぜぇ…がはははは。お前こそ、よくぞ最低限の力で敵を瞬殺したものよ」


 ムキムキジジイと甲板に座り込んで、少し休憩する。


 流石に怒りに身を任せすぎたか。


 でも後悔はない。


 一線を越えちまったら、オレや他の人間も聖人ではいられないんだ。


 こんな舐めた真似してくれたエルデネトは、改めてオレの手でぶっ潰してやらねえとな。

 

 …ちょっと時間がかかるけど、いつかは成し遂げてみせるさ。


 「「「ユルゲン皇子万歳!」」」


 「ようやったのユルゲン!他の船のオークは降伏を申し出てきよった!大勝利じゃ!」


 周囲では【南方艦隊】のミニスカねーちゃんやアデリナが喜びの声をあげている。


 「ユルゲン。さらわれた子供たちも無事です。今からトリーアに送り届けましょう」


 「ああ。ご苦労だった。あとそろそろ服を着た方がいいぞ母さん。裸では風邪を引く」


 「きゃ!ユルゲン、エッチです…」 


 「そんな格好をしてるどすけべ乳母が悪い」


 エミーリアも無事だ。




 じゃ、とりあえず必要な物資を回収してー、





 「貴様ら…エルデネト帝国の名誉を汚しておって…このダルンザドガド号まで…絶対に許さん!!!」

  

 バリバリバリバリッ!


 なんだかんだ傷1つなかった【外輪船】がいりんせんの船尾が恐ろしい音を立てて割れ、何かが飛び出してくる。


 「このアルタン、秘密兵器【轟雷】ごうらいできさまら全員を始末してくれるわぁぁぁぁぁ!!!!」


 不恰好な鉄のでっかい鎧って言えば良いのか?


 アルタンの背丈の3倍はあるし、何か動力でもつけてるらしい。


 手足が異常に長く、胴体に【震天】しんてんを何個か括り付けてやがる。


 奴らの秘密兵器なんだろうが。相変わらず海では使い勝手が悪そうだ。


 どしどしと歩き始めるが、【外輪船】がいりんせんの床は重みに耐えきれず、ギシギシと軋み始める。


 「あ、そういやいたなお前」


 「な、ななななな…どうして、このエルデネト帝国が貴様らのような小国にぃぃぃぃ!」


 「あんたらに簡単に侵略されるほどは小さくねえってこったな。デカさだけが強さじゃないんだぜ?」


 「ええい、黙れ黙れ!」


 「…1つだけ警告しておく。降伏すれば、すぐには殺さない。もちろん情報も吐いてもらうがな」


 「そんな要求なぞ飲めるか!き、貴様だけでも道連れにしてやるわぁぁああ!」


 オレの申し出を断り、ガチャガチャと【轟雷】ごうらいを突進させるアルタン。




 ちょっとだけまじの大技出すか。


 今のオレは色々とビンビンなんだ。


 「これを最初に受けるエルデネト人はお前だ…光栄に思えよ」


 オレは両腕に風の力を感じながら、スキルを発動する。




 「ーーーー【青嵐】せいらん


 巻き起こすのは、風ではなく嵐。


 「何!体が勝手に…どわあああああっ!」


 アルタンの体は【轟雷】ごうらいごと浮き上がり、みるみる【外輪船】がいりんせんを離れていく。


 飛んでいく先にはー、




 うねりをあげて海上を突き進む、巨大な竜巻。


 「う、動け、動けええええええ!うわああああああっ!」


 アルタンは悲鳴を上げながら、竜巻に向かって吹き飛ばされた。


 そしてー、




 姿が見えなくなる。


 代わりに、衝撃音と破壊音がバキバキと響き、その後静かになった。


 「ザールラントを…舐めんじゃねえよ」




 竜巻はすぐに消え、朝日が登り始めたトリーア湾はようやく静かになる。


 いや、すぐに別の音で街中が満たされ始めた。




 「ユルゲン皇子万歳!エルデネト帝国からザールラントをお救いください!」


 「英雄ユルゲン、愚王アルバンに代わり王となってください!」


 「きやああああああああ!ユルゲンさまああああ!かっこいいいい!」


 それは、トリーア市民たちの歓声であった。



 ****



 数日後。


 色々と後処理を終えたオレは、【アデリナ商会】の風呂場に招かれていた。


 トリーアの街を一望できる小山の上に建てられており、夜風が気持ちいい。


 そこでー、


 つぷん…


 「くぅ…わっちのような可愛い狐耳をはむはむしながら、処女の柔らかくて敏感なところを指でくにくにするなんて…ユルゲンは変態なのじゃ」


 「今日こそお主を果てさせるのじゃ!って言ったのはそっちだろ。【シュレディンガーの狐おっぱい】やらねえのか?」


 いつものように乳繰り合っていた。




 「…それより、聞きたいことがあるのじゃ。明日トリーアを発つというのは本当か?」


 「ああ。おっぱいが待ってるからな」


 「そうか。寂しくなるの」


 ちょっぴりため息をついたあと、アデリアは笑った。


 「なら、今日はアデリナのおっぱいを特別にくにくにしてもいいのじゃ!お主がいいならそれ以上もー」


 「ユルゲン」


 突然の乱入者。


 


 「突然ですが、エミーリアの母乳おちちを飲んでください」


 「え」


 「嫌…ですか?」


 うるうる…


 だからそれには弱いって言ってるだろ!


 「オレは一向に構わんっ!」


 ぷにゅん。


 メイド服の胸元を優しく開けると、シミひとつない真っ白な2つの小山の端から、母乳おちちがすでに少し溢れている。


 オレの視線を感じ取ったかのように、ぷるりと震えた。


 「はぁ…はぁ…やっぱり、少し出ちゃいました」


 どんな高級な菓子でも、これより芳醇で甘い香りは発さないはずだ。


 右の先端に口をつけ、ゆっくりと飲み始める。


 「んっ…ユルゲンの舌。ぴりぴり…しますっ!」


 「こうか?」


 「はぁ…もっと、ゆっくり…吸い出すように。そう、そうです…ユルゲンに吸われていると、幸せで満たされましゅ…」


 「なんだよ、特に変わりは…何だこの味、甘い!?」


 「はい。スキルの応用で母乳おちちの味を変えてみました。どうですか?」


 「なんてことに力を使いやがる。でも、悪くねえな…」


 「ふふふ…そんな吸われたら。すぐ空っぽになりますよ?…これからもエミーリアを、いっぱい、可愛がってください…ね?」


 「邪魔するぜえ!どうしても部下たちが自分たちの胸を試して欲しいって言うんでなぁ!」


 「「「ユルゲンさま、褐色おっぱいの良さもぜひ味わってください!!!」」」


 更なる乱入者。


 今度は団体さんだ。


 美少女水兵さんは、ミニスカビキニが水でスケスケになってる。


 「不公平なのじゃユルゲン!先客はわっちなのじゃ〜!」


 「ユルゲン、次はちょっとしょっぱい味も作れますよ♪」


 「「「ユルゲン皇子!我らのおっぱいをご賞味いただくまでは帰れません!」」」


 「がはははは!ついでに俺とっぱい勝負でもしてみるか?」


 どうやら夜は長くなりそうだ。


 


 「お前ら全員…かかってこいや!!!」


 


オレは意を決し、おっぱい天国へと向かっていくのだった…

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る