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だけどその話のまえに、君が例としてあげていた、星占いについてオレも話そう。
君はさっき、人間のパターンを十二という限られた数に分類するのは、無理があるんじゃないか、というようなことを言っていたね。
だけどそれくらいの数字が、ちょうどいいのさ。
そもそも十二というのは、一年のなかの月の数だよね。
星座というものは、一年を通しての四季のなかにあるわけだけど、子供が生まれたときにだね、その子が何月何日…どんな季節に誕生したのかっていうのは、けっこう重要なんじゃないかと思うんだ。
それはこう考えるからさ。
春に生まれた子供と、夏に生まれた子供、秋や冬に生まれた子供…それぞれの成長環境の変化から、人格形成時において違いというものがでるのは当然じゃないだろうか、ってね。
じゃあさ、まず春に生まれた子供について想像してみようか。
この子が生まれてから目にするのは、春の花が咲き乱れ、あたたかな日差しと心地のいい気候の、活動しやすい世界だろうね。
きっと、この子の親は、春の穏やかな陽気のなか、いろんな場所へお散歩に連れて行ってくれるはずさ。
逆に冬生まれの子供はどうだろうか。
この子が生まれて目にするのは、空から降る白い雪だ。
外は寒くて、新生児には耐えられない。
だから、あたたかな家の中で、その子は親にやさしく毛布にくるまれながら、まだ見ぬ春というものを待つことになる。
そんなわけで、こういった生まれたときの環境の違いから、ちょっとした性格の…それに基づいた、ざっくりとした運命の似通りというものは、あるのかもしれない。
それこそ統計的にね。
例えば、春生まれは、活発な性格の子が多いとか、冬生まれは、おだやかな性格の子が多いとか、そういうカンジでさ。
そこから共通で分類できる、大きな運命の流れってやつが、あるのかもしれないねぇ。
あ、わかってると思うけど、今言った例はテキトーだからね、オレの専門は占いじゃないから、本当のところは詳しくは知らないよ、オレ個人の意見として、かるーく聞いてくれ。
結論としてはだね、占いってのは、何の根拠もなく適当なことを言ってるんじゃない、ってのを伝えたかったんだ。
むしろ占いに根拠ってのは、大いにあるんだよ。
じゃあ、ここから核心に迫っていこう。
オレは占いが好きだとは言ったけど、江蓮君が話してくれたような、それこそ雑誌の裏なんかに載ってる星占いなんかは、まったく見ないんだ。
あれは大衆向けすぎるからね。
確実なメリットがあるっていうのは、こういった、対人占いのことさ」
そう言って茜さんは、『占いの館』と書かれている置き看板を、コンコンと軽く叩いた。
俺たちはもう、『占いの館』のあるらしいビルの入り口の前に立っていて、看板の先には、地下へと続く階段が見えていた。
「対人占い…つまり、占い師に一対一で、直接占ってもらうことだね。
占いっていうものは、それこそいろんな種類がある。
星座占い、西洋占術もあるし、カードを使ったり、四柱推命なんてのとか、八卦をみたりとかさ。
でもさ、占いの方法はなんだっていいんだ。
重要なのは、自分の目の前にいる、占い師に占ってもらうという、行為にある。
肝心なのはね、占い師ってのは、他人の相談をきくプロだってところだよ」
地下への階段は長く続いているようで、ビル前に立っているだけでは、その行き着く先はまったくみえない。
茜さんは、さっそく階段を下りはじめようとしている。
「考えてごらんよ。
占い師は、人の悩みをきくことが仕事だろ、毎日毎日、何人もの老若男女に会って、そいつらの相談にのってるわけだ。
だから占い師には、経験から蓄積された、膨大なパーソナルデータがあるってことになる。
その経験値から、まず占い師は、相談者の人物像をある程度、見抜くことができる。
年齢や性別、相談者の外見、服装、仕草、持ち物…そんな諸々の情報から、統計的に考えて、相談者がどんな性格で、どんな悩みを持っていて、どうアドバイスすれば満足して帰っていくか、その見当をつける。
さて江蓮君、君はコールドリーディングという言葉を知っているだろうか」
「コールドリーディング?」
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