第32話 番外編 後悔 (チャーリー視点)

平民の出だが、昔から見目もよく仕事もそれなりに出来た。


クレイン様の執事の面接と試験に受かった時は舞い上がるほど嬉しかった。

次期公爵家の執事になれるのだと。


だが、実際はウィルクス次期公爵のクレイン様は隣国に行き、残されたのはクレイン様の婚約者という元子爵令嬢の娘しか、邸にいなかった。


親がいないのでは、もう貴族ではない!

しかも、子爵ごときで!

何故私がこんな年下の娘に仕える必要があるのか。


エステルもいつか追い出されると思っているのか、毎日のようにウィルクス公爵邸に通っていた。


きっと毎日通うほどご機嫌とりをしているのだろうと思った。

ご機嫌とりをしないと邸にもいられないエステルが益々格下に見えて、仕える気にはならなかった。


そしてある日ウィルクス公爵の親戚のブレンダ様がやって来た。


ブレンダ様はウィルクス公爵の親戚で伯爵令嬢と身分は申し分なく、お姿は美しかった。


この方こそクレイン様にお似合いだと。


そして、私にも親密に声をかけて下さりこの方こそ邸の女主人になって欲しくなっていた。


ブレンダ様に口付けされ、閨の教育を頼まれた時は、伯爵令嬢と共にできるなんてと舞い上がってしまっていた。

毎夜どちらともなくベッドに入り、このブレンダ様ならクレイン様もご満足頂けると理由をつけるように抱いていた。


しかし、全て妄想で終わった。


クレイン様はブレンダ様に愛情の一欠片もなく、全ての愛情はエステルに向けられていた。


他界したウィルクス公爵様もエステルがお気に入りで、邸もクレイン様の為でなく、どちらかといえばエステルの為にあんな豪華な邸を見返りなく用意したと、後からわかった。


エステル自身も父親の遺産があり、金には困ってなかった。


全てを知り、理解した時には既に遅く、クレイン様の邸を私物化しようとした罪にエステルへの虐待…罪人として収監された後だった。


あれほどエステルから注意を受けていたのに、何故信じなかったのか。


しかも、クレイン様は私のような平民にも邸の弁償にエステルへの慰謝料を要求してきた。


何年経ってもまともな生活は送れない金額だ。

ましてや平民が準備できる額ではなかった。


それでもクレイン様は私達使用人を許さない。


もう後悔しても時間は戻らなかった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

年上婚約者は溺愛したいそうです。~おかしな属性を身に付けて帰って来ないで下さい~ 屋月 トム伽 @yazukitomuka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ