迷うことは、何をしてミステリー作品とするのかです。




 広義のミステリー作品として書いた『彷徨さまよえる王』。

「第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」にカクヨムから応募する作品です。


 賞を取るのは非常に難しい公募ではありますが、挑戦してみました。ドンキホーテ気分なんですが。


 横溝の応募要項には、広義のミステリーとありました。さて、広義とは、あるいは逆に狭義ミステリーとは何かということです。


 推理小説といえば、文豪と呼ばれる江戸川乱歩氏。

 彼の定義によれば、

「主として犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれていく経路のおもしろさを主眼とする文学」



 ときどきですが、推理小説とミステリー作品を全く同じと混同なさる方がいると思っています。  

 同じという意見もあるにはあるんですが。

 シャーロック・ホームズが活躍する推理作品を英語では、detective novel(探偵小説)と言います。


 いわば、探偵の謎解きを主眼とした本格推理作品は、ジャンルとして推理小説に分類し、そうではない作品をミステリーとしたほうが、理解しやすいのではないかなどと思っています(個人的な意見です)。


 現在、歴史ある大きなミステリー系公募では、本格推理作品を求めるものが少なくなりました。その理由から、単にミステリー募集とは書かず、広義の意味、あるいは広い意味でのミステリー作品と応募要項に書かれています。


 おそらく、本格ものがニッチなところに追いやられたからでしょう。(単純に売れないという大人の事情もありそうです)


 海外でもベストセラーになるミステリー作品。たとえば、最近、大ベストセラーになった下記などの作品群は、広義の意味でのミステリー作品だと思います。謎解きや伏線、どんでん返しももちろんですが、それ以上にキャラが立ち、アクションや冒険、人間ドラマが面白い作品です。


 ● スティーグ・ラーソン『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』からの三部作


 ●ダン・ブラウン『ダヴィンチコード』


 ●ジェフリー・ディーバー『ボーン・コレクター』


 などなど、世界的に大ヒットしたミステリー作品は、分類的には広義のミステリージャンルかもしれません。


 スケールの大きな作品ばかりで、こんな作品をいつか書ければと幸せです。



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 ミステリー公募について

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 今回、わたしが応募しました「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」です。


 この公募と同じように歴史があり、著名作家を冠した有名なミステリー賞には、「江戸川乱歩賞」「アガサクリスティ賞」「松本清澄賞」「鮎川哲也賞」があります。それぞれ賞金も高額です。


 これらの賞の『応募要項』ですが、下記のように記載されています。


「鮎川哲也賞」

 ● 長編推理小説


 ↑本格推理作品・・・↓ミステリー作品(下に行くほど、推理小説の色あいが消えていきます)


「江戸川乱歩賞」

 ● 広い意味の推理小説


「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」

 ● 広義のミステリ小説。又は、広義のホラー小説。


「アガサクリスティ賞」

 ● 冒険小説、スパイ小説、サスペンスなど、総合的なミステリー小説


「松本清張賞」

 ● ジャンルを問わない広義のエンターテイメント小説



 上記のなかで、「鮎川哲也賞」を除いて、みな広義の意味でのミステリ小説と応募要項に書かれています。

 そうしたエンタメ作品的なミステリーで大賞を取った作品には、わたしの好きな小説が多いことも事実です。



 さて、公募元の出版社が考える、広義とはどういう意味なのか、疑問に思われる方もおられるかもしれません。

 わたしも考えました。


 狭義と広義。

 この差ってなんでしょうか?


 とりあえず、狭義ミステリー≒本格推理物という分類はできると思います。

(いや、もう、個人的な意見なんで、そこ、突っ込まないでください)


 狭義ミステリー作品とは、冒頭に仕組まれた謎がストーリーの根幹をなしており、その謎をパズルのように解いていく物語。そこに人間ドラマが必要かといえば、推理的な意味で必要な場合をのぞいて、どちらでもいい作品なんだと思います。


 では、広義のミステリーとは?


 入賞して書籍化された、あるいは、大賞を取った作品を拝見していくと、エンターテイメント小説の代名詞にように、ミステリーを捉えているような気もします。


 ちょっと言い訳ですが。シャーロック・ホームズ(やエリキュール・ポアロなど)は別格にしておきます。彼らのキャラって最高ですよね。天才で変人で、ずけずけと物を言う女嫌いの興味深い人物、相棒にワトソンを配したことで、彼のキャラがきわ立っています。


 さて、わたしは人の心理に興味がありますので、人間ドラマのない作品は、パズルを解く快感はあるのですが、感動はできないのです。

 泣いたり、感動したり、ハラハラドキドキ、あるいは、爆笑したりと感情を揺り動かされる作品を読みたいと思っています。



 今回、「第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」に応募した作品は、ともかく、キャラクターを際立たせること。いわゆるキャラ立ちを大切にしました。


 登場人物、それぞれの性格が明確に際立つ設定にするため、メインカラーをつけキャラ立ちの一助にしました。イメージを自分なりに固定するためです。


 その上で、この作品はバイオレンスアクションを多く取り入れようと思ったのです。これは海外のベストセラー作品を読み、そのドキドキと面白さに感激したからでもあります。


 酷い状況にもめげず、意志を貫き通す、芯のある主人公にしたかった理由でもあります。


 そして、大きなテーマをミステリーにもかかわらず、『愛』としました。


(『彷徨さまよえる王』を読まれた方のコメントに、愛について深く考えさせられたとか、最後のエピローグのために書かれた作品ですね、とか書いていただき、本当に嬉しかったです。ありがとうございます。)


 作品は「家族の愛」「男女の愛」が裏テーマのミステリー作品です。

 舞台は香港、東京&横浜、デトロイトとグローバルに展開しています。

 

 


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 下記は書く前に考えた登場人物のテーマカラーです。

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【主人公の『黒城櫻子』のメインカラーは黒】


 黒は、全てを受け入れる色。どんな色でも取り込む黒。櫻子の性格は、偏見を持たず、人をそのままの形に受け入れる、ある意味、他人を信じやすい性格をあらわしています。


【『五月端道隆』は桜色】


 几帳面で真面目、優秀な彼に桜色は似合わないかもしれませんが。大きな包容力で櫻子を導き、そして、春のひだまりのように愛するということで、桜色にしました。


【『白川ジオン』は白】


 白、純粋な色。どんな色もつけられない色です。色を混ぜると白は消えます。だからこそ、ジオンは、あらゆるものを拒否して、孤高にひとり立つ王です。



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 完結後、多くの読み専の方々からもフォローいただいて、とても嬉しくて。読んでくださるなんて、パソコンの前で拝んでます。


 数人の方に「今は『彷徨える王』ロス状態です」と書いていただき大感激もしました。がんばった努力が報われた気分です。

 本当に本当にありがとうございました💕



【完結】彷徨さまよえる王

 https://kakuyomu.jp/works/16816927863278356267

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