小説の優位性とは。心理サスペンスの新作公開しました。



 兄にまつわる謎を解明するサスペンス作品。

彷徨さまよえる王』を公開しました。


 カクヨムに書き始めて2年になりますが、完結させるのに、これほど苦労した作品ははじめてでした。


 文体に凝ってみたいというのと、映像とかアニメに負けない、小説の良さとは何だろうかと考えていたからです。


 現代のさまざまな表現媒体(映画、テレビ、アニメなど)と小説を比較した場合、小説の優位性とには、難しいものがあります。この後さらに、8Kシアター とかVRとかの3Dコンテンツが発展すると、テレビなどの映像媒体も廃れていくかもしれません。


 今は文字だけの書籍よりも、絵や映像で見る動く媒体のほうが強い。これが、書籍が売れない理由でもあると思います。

(さらに追求すると、エンタメ作品よりも、ネットなどのリアルな映像がうけている現状もありますが、これはまた別の問題)


 それでは、映像作品に比べ小説の利点はあるのでしょうか?


 これは私個人の考えですが、文字だけで表現する小説に利点があるとすれば、人物の心象風景、深い心理描写だと考えています。

 もう一つは、詳しい知的知識の取得だと思いますが、今回はこれに言及をしないでおきます。

 すばらしく感動した映画とかドラマを見たあとに、その原作を読みたくなることがあります。原作を読む理由は、映像では知り得ない主人公たちの心の動きです。主役の推しは何を考えていたんだろうかという好奇心です。小説によって、主人公たちの深い感情を知り、ますますファンになることがあると思うのです。


 これが小説の大きな利点だと思っています。

 場面説明や会話だけでは理解できない、その時の心理です。

 公開した作品は、この部分にとても神経を使いました。うまく書けているといいのですが。


 というのも、感情ダダ漏れも、ある意味、気色が悪いことがあるのです。そのあたりのバランス感覚を磨きたいと思っています。まだまだ、勉強中です。


*************



 さて、『彷徨さまよえる王』のあらすじを考えはじめたのは4月頃からでした。

 5月に書き始めて6月いっぱい、と、2ヶ月くらいで書き上げる予定が、6月がすぎても一向に進まず。本当に試行錯誤の連続でした。

 7月末になって、つまり、昨日ですが、やっと公開してもいい段階になったと思います。お読みいただけると、とても嬉しいです。


 作品的には、モノクロームがイメージカラーで、以前に書いた退廃的な雰囲気をもつ『妖しく闇に近づく薄墨色』と同じようなトーンなのですが、主人公の性格が全く違います。


 主人公のわたしは、『薄墨色』のような他人任せで男に流されるタイプではなく、愛情深く自立した強い女性です。すべてを自分の意思で、迷いながらも必死に頑張る女ですが、少し、おっちょこちょいな面もあります。


 最終章あたりは、わたしの作品では最高に暗く暴力的な内容になりました。しかし、カタルシスのある内容へと昇華したつもりです。最後はハッピーエンド。エンタメはやはり気分良く終わらせたいと思っています。


 作品内では、カルト集団とか、中国の王朝とか、米国の暗い一面とかを取り入れており、人間の業のようなものをテーマのひとつにしております。

 冒頭に書きましたように、「愛」とは「人の感情」とは何かもテーマです。この作品を書くにあたって、常に念頭に置いていたのが、主人公の深い愛情です。どんなに困った男でも、一環して彼女は愛していきます。


 主人公には、血のつながらない冷酷な兄がいます。そして、もう一人、同棲相手で優しく包み込んでくれる男もいます。この三角関係で、誰を選ぶのか、実は最終話を書き上げたのですが、過去の時点で誰を選んだのか、まだ書いておりません。

 そこだけ、公開した後でも、まだ書いてないんです。皆様の反応を見て、後で付け加える予定です。


 作者のわたしなら、答えは簡単です。

 どんなにイケメンで、どんなに魅力的でも、危険が好きな男より、愛してくれる男がいい。穏やかな愛情に包まれていたい。そういう男との生活は退屈かもしれませんが、幸せだと思うからです。


 さて、物語はモノクロームのイメージで描きました。

 色のテーマは黒と白、そして血の赤。


 黒色は、色の三原色すべてを混ぜると、黒にしかなりません。黒にどれだけ色を重ねても黒です。つまり、すべての者を自分のなかに取り入れることのできる人というイメージで、主人公の女性のテーマカラーにしました。

 

 一方、白は何物にも染まらない色です。白に色を重ねると、白は消えてします。それほど孤高の色という意味で、すべてを拒否する兄のテーマカラーにしました。


 色彩カラーを象徴するために、主人公と兄は色に関する名前にしました。


 主人公は城櫻子。

 兄は川ジオン。

 5月の春の穏やかなイメージとして、主人公を愛する男の名前が五月端道隆です。


 そして、血の赤い色が、そこに混ざります。


 お読みいただけると本当にうれしいです。


『彷徨える王』

https://kakuyomu.jp/works/16816927863278356267

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