ハイファンタジー版のまどマギ
- ★★★ Excellent!!!
王道量産型ストーリーを裏切っていくある種の孤高を目指す作品です。
主人公最強タグのつく俺様最強クソイキリキッズ主人公が大暴れ「しない」作品なので、鎌倉武士の末裔である日本人読者の「武士の本懐とは、舐められたら殺す!」からのザマァ展開を期待する方は、「八男」とか「ありふれ」とか読んでたら良いと思います。
駄女神やガバ神が管理する、暴力や貴族等の横暴が支配する危険でクソみたいな世界、神の都合で生き返らされて、死なせてくれと叫ぶ主人公はチートを押し付けられて無理矢理生きることを強要されます。タイトルの通りですね。
最強賢者と最強武芸者(冒険者)による児童虐待スパルタ特訓や偏った思想教育により社会性を身につける事なく、これ以上教える事もないのでというような理由で理不尽で危険な世界に放り出されます。大丈夫、僕最強なんで。と思いきや冒険者から貴族まで暴力や権威(主に数の暴力なので大体暴力)で理不尽を押し付けてくるところ司法の存在しないヤクザ的社会において、俺様最強クソイキリカス主人公は手加減ができないので殺してしまうことから、理不尽な主張に対する正論パンチ(非暴力)、正論カウンター(非暴力)、正論ラッシュ(非暴力)で対抗します。膠着状態になったところで主人公を金蔓とする利害関係者のおじさんやおばさんが暴力を振りかざす輩に慰謝料を請求して主人公は慰謝料とか利権を手に入れます。めでたしめでたし。
主人公は血の繋がらない男親に偏った育て方(少年兵育成プログラム)をされてしまった為、他者の気持ち、人の情や愛といったものがサッパリ理解できないサイコパスかつ自己愛性パーソナリティ障害の一種の怪物であり、この怪物が人間らしい愛や情を学んでいく物語だと思います。であるので、主人公に共感してこの世界の理不尽さに憤っていると、読むことがストレスになると思います。また人間の形をした怪物であるので普通の人間がするような合理的行動をしないこともストレスを感じさせる要因かもしれません。実際応援コメントにはストレスを感じる旨が多く書かれています。
本作は冒頭で書いた通りテンプレストーリーではありません。本作の最高の魅力は、ある種純粋な精神を持つ主人公が理不尽な世界の仕打ちによって精神的に曇ってゆき、成長してゆく所です。似たテーマの作品を挙げると「ファブル」「平和の国の島崎へ」辺りでしょうか。最強主人公が人間性を学習する物語ですね。ファブルの主人公も殺しはしないのでちょっと似てますね。殴られてもヘラヘラできる忍耐力の差からファブルの方が大人ですが…あ〜俺はプロやからなー…ランス君は少年なのでアウトレイジ張りに馬鹿野郎スープこぼしやがって殺すぞこの野郎みたいに威嚇行動に移行します。
主人公が理不尽な仕打ちを受けてメンタルを病んで曇ってゆく様をみて、
「美しい」
と愛でるのがストレスなく本作を愉しむ読み方だと思います。
何それオモロイの?と思う人は多いと思いますが、進撃の巨人のマーレ編でライナーがメンタルを病んでゆく様は美しかったじゃないですか?アレです。あと、機動戦士ガンダムサンダーボルトのダリルとイオのメンタルが削られてゆく様の美しさ。アレです。そして、まどマギの魔法少女達の精神が曇ってゆく様の美しさ。アレです。
さぁ、最強主人公ランス君が世界に虐待される様を愉しもうではありませんか。作者様!もっとラン虐を!