第35話


教会制圧後。

 龍と聖女と、ノアとキャーロットは別行動をしていた。


 朽ち果てた街の中。

 家が倒壊しちょうど座れそうに倒れている木材を見つけて座った。

 

 

「また、助けられちゃいましたね。」

「キャーロットが無事でよかったよ。」


 ノアがダンジョンで化け物を倒した時とは違う感情でそう答えて、安堵の笑みを浮かべる。


 き、嫌われてないのかな?

 私のことを嫌っているようには見えないけど、大丈夫なのかな?



 キャーロットがノアの笑顔を見て、嫌われたのかもという不安が少し解ける。二重の不安がほんの少し和らぎ、ここで少し口角を上げた。


 ノアはノアでランネによって忘れらさせられた記憶を思いだしたことで、どうやってそのことを切り出せばいいか迷っていた。


「………」

「………」


 互いに中々話を切り出せず、気まずい沈黙の時間が生まれる。


 このままだと何も解決せずにノアが魔法を使ってキャーロットを送り返して、解散してしまう可能性があった。

 


 そうなる訳にはいかないと、長い沈黙の中ようやくノアが緊張した様子で口を開いた。


「あのさ、キャーロットが告白してくれたことだけど……」

「ーー!!」


 告白と聞いて、キャーロットの顔が何かを覚悟したような顔つきになる。

 何やら嫌な想像をしているのかもしれなかった。

 よく目元を見ると、軽く雫のようなものが出来ている。


 ノアはキャーロットを苦しめていたことをここで初めて知った。



 告白したのにそれに答えもせずに、マホとかと新しく付き合ったらそうなるよな。


 ランネのせいとはいえ、自分のやっていることに嫌気がさした。

 

 とんだ屑じゃないか。

 キャーロットを何だと思っているんだ。

 他の男と変わらないようなものじゃないか。何だったらそれより酷い。


 

 ノアはキャーロットに近付くと、優しく包み込むように抱きしめた。

 キャーロットは求めていた感触に、疑問を浮かべながらも体をノアに寄せた。



「ごめん。本当にごめん。」

「謝らないでください。私も、正直覚悟は出来てました。私なんかが、ノア様に告白すること事態おかしかったんです。」


 キャーロットの言葉にノアは思わず腕の力を強める。

 キャーロットがシリアスな雰囲気を忘れて、雄に抱きしめられていることに激しく内心興奮を覚える。

 

 なんかもう、こうやって抱きしめられたら嫌なことは全部忘れられる気がする。

 

 女としての本能か、キャーロットにそう思わせた。

 


「キャーロットのことが好きだ。」

「ーーん? 今、なんて言ったの?」


 興奮を覚える中、それを加速させるような言葉にキャーロットは聞き返した。


「……恥ずかしいんだけどな、キャーロットのことが好きだ。」

「え、え、え。キャ、キャーロットって私の名前だよね。ど、どうして私のことなんて好きに。私のことが好きだったのなら、直ぐにそう言ってくれれば良かったのに。」

「ーーっ」


 キャーロットの言葉に胸が痛くなりながら、嫌われて無さそうな様子を見てことの発端を話そうと思った。


「その理由のことだけど、聞いてくれるか。ちょっと長くなるけど。」

「……抱きしめながらならいいですよ。」


 

 キャーロットが苦しめられたせいか甘えるようにそう言うと、ノアは意識してなかったのに意識したせいか少し顔を紅らめながらぽつぽつと話し始めた。





「……っていう訳だ。本当にごめん。魔法とはいえ、告白のことすっかり忘れてしまって。こうなる前からランネ先生のことは怪しいと思ってたから、俺がランネ先生をどうにかしていれば。」

「ーー」

「キャーロット?」

「はい?」

 

 ある程度ことの始めから終わりまで話したところキャーロットを見ると、顔を紅くさせて俺の胸から顔を上げた。

 きょとんとした様子で、こちらを見つめ返す。


 自分で思って恥ずかしくなるけど、俺の胸の感触に浸るのに夢中でまるで話を聞いていないように見えた。俺が男だからっていうのもあるだろうけど、意外とキャーロットは気にしていないのか?

 

 実際キャーロットは好きと言われたことに安心して、ノアの胸を楽しむことに集中し話の内容の八割も入っていなかった。


 

 子供達を世話する様子を見て忘れていたけど、キャーロットってもとはお気楽な感じだったか。



 良かったような良くなかったような気分になりながら息を整えた。



「それで、あの。キャーロットさん?」

「さんなんて付けないで、キャーロットって呼んで下さい。自分のことを俺っていうの滅茶苦茶興奮します。男って感じがして。学校ではいいですけど、二人の時はそう言って下さい。」


 そうじゃないんだと思いながら、俺は分かりやすいように伝えた。


「……あの、一応俺から初めて好きって告白したんだけど。それには答えてくれないの。一回無視した俺が言えることじゃないと思うけど。」


 あ。


 今更気付いたようで、ありったけの空気を肺に詰めて勢いよく発した。


「めっちゃ好きです。愛していますノア様。私なんか好きになってくれて本当にありがどうございます。あの、あの、好きです。格好いいし、いい匂いします。ずっと近くにいて嗅ぎたいです。あと、抱きしめられるのが好きです。えーと後は……」


 次の言葉を言わせないように、ノアはキャーロットのことを力強く抱きしめた。

 キャーロットが、にやーっと頬をだらしなく緩めた。



ーーーーーーーーーーー



 とりあえず一旦ここで完結にします。

 後編は、もしかしら気まぐれで書くかもしれないといったくらいです。

 

 ……完結させたので、一か月に一回投稿するとか言って全然投稿しなかったの許してください。( ノ;_ _)ノ


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性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。 みかん好き @rowrow3

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