第3話
「私は神です、知りたいこと何でも教えましょう」
「俺のことどれくらい好きか教えて?」
「面白い人だなーというくらいには好きですよ?」
「なんと」
突然目の前に現れた人に自分は神ですとか言われても納得なんてできるはずもないのだが、こっちの質問にちゃんと答えてくれるのを見るにどうやら神様であってたようである。
地獄に仏、転生に神。なんともはや、ありがたいことである。
「まぁ私は神ではないんですけどね」
「なんと」
と、ありがたがっていたら本当は神様ではないのだと告げられた。
思わずちょっとテンションが下がるが、そもそも死んだ云々の後に出会ってるんだから、神じゃなくてもあんまり変わらねーやと思い直してとりあえずまた拝む。
「そこで拝まれるとは思いませんでした」
そしたら神様(仮)に苦笑された、解せぬ。
三話・会合しまshow!
「遥々遠くからご苦労様です。私、一応ここの管理などを執り行っているモノですわ。なんでも、お好きなようにお呼び下さいまし」
「では貴様」
「はいなんでしょう貴方様」
「負けた」
好きなように呼んだら文字数増やされたでござる、相手の方が一枚上手でござる。
思わず膝を付いて項垂れていると頭上から「呼びにくければミナト、で構いませんが?」との提案。
本名か何かだろうか?とりあえずありがたく呼ばせて貰うことにする。
「ではお前」
「はい貴方♪」
「ミーの敗けデース」
意味を変えられたらおしまいだってば。
どうにも会話の主導権がとれそうもないので素直に話を聞くことにする。……こここれは決して負けたわけじゃないんだからね?!
「はいもちろん♪……さて、貴方様の冒険はここで終わってしまいました。コマンド?」
「ヤメローシニタクナーイ!」
もう既に死んでいるのに死にたくないとはこれ如何に。
ともあれ、自身が死んだあとであることを確認する、という意味ならばさっくりざっくりである。
「はい、そういうわけでして。貴方様は向こうの神様から幾つか贈り物を受け取ってここにたどり着いたわけですが。……ふむふむ、変なことになりそうなものは特に有りませんね。──あったら
「ナチュラルにもっかい死にそうになってた件」
死んでるのにもっかい死ぬとはこれ如何に。
「一度死んだのなら二度も三度も同じだと思いませんこと?」
「思いませんですこと」
にこやかな笑顔のミナトさんに必死に首を横に振る。
ここで了承すると特に悩みもせずに飛頭蛮にされてる未来がありありと見えるのでわりと必死である。中身にアンコがつまってるわけでもないのでそんなことされたら普通に終了だ。
「つまってませんの?」
「夢と希望がつまってるといいですね」
「……やっぱり切られたいのでは?」
ワクワクした目で見られても嫌なものは嫌です。
「……さて、とりあえず私からの検査は以上です。特に問題なく通って構いませんかと」
「やったぜ」
あれからあれこれ調べられた結果、このままこの世界に転生しても大丈夫だと太鼓判を貰った。……検査されながら思ったのだが、なんだか空港検査を受けているような気分だった。
「まぁ、疫病検査ならぬ要らぬ騒動の火種検査ではありますからね。下手なチートは無謀の始まり、特にこの世界では迂闊な行動一発即死、ですもの。……あいえ、即死ならまだ優しい方でしたね」
「ヤベーところをこれでもかと匂わせてこないで下さい死んでしまいます」
ただまぁ、会話のあちこちに地雷を突っ込んでくるので何一つ気は抜けませんでしたけどね?!
「しっかり避けた貴方が言うことでもないと思いますが。……では、はい。これを」
そういってミナトさんは何かをこちらに差し出した。
……勲章?ピンがあってどこかに付けるバッジ的なものだった。とりあえず受け取って胸のポッケにくっつける。
「デレデレデレー。残念、貴方は呪われてしまいました」
「ちょ」
「そしてテッテレー。貴方は呪いに打ち勝ちました。呪いに打ち勝ったものは古来から祝福を受けるとされます、おめでとうございまーす」
「ええー?」
くっつけたら呪われて、呪われたと思ったら既に呪いを克服していた。
何を言ってるのか何一つ分からないのですが?
「具体的には私からの呪いを克服しましたので、その特典が与えられます。やりましたね、更なるチートゲットですよ?」
「おー。……ところでその呪いとは?」
「克服できなければ今ここで爆散していました」
「……
「爆散していました。運がいいというかなんといいますか、持ってますね!」
「何故この人はここまでナチュラルに人を亡きモノにしようとするのか」
人の悪意が見えるようだよ、と俺が遠い目になったのは言うまでもない。
「いえ、私も多分大丈夫だろうなーと会話の中で確信したから渡したんですよ?」
流石に無意味に爆散はさせませんよーとミナトさんは言うのだが、それは裏を返せば意味があれば爆散させるってことですよね?……と問い返したら視線をそらされた。
この人やっぱヤバいのでは?
「こんな世界なので多少ヤバいくらいがちょうどよいのですよ」
「よいのですか」
「よいのですの」
ならいいか。
気を取り直して呪いと祝福の子細を聞く。
なんでもこの世界には一つヤベーい化け物が居て、さっきのはその化け物になれるかの適正を測るためのものらしい。適正があれば馴染んで、無ければそのまま付けた人が消え失せる。
……ホントに爆散寸前だったんですがそれは。
「ところが貴方は馴染むより先に行っちゃいました。なので呪いが裏返り、祝福と化したのです」
「なんと」
どうやら俺はいつの間にか、地上最強の生物への一歩を踏み出していたらしい。これはあれか、砂糖水とか飲んだ方がいいのだろうか?
「ただまぁ、祝福以外は最低限の身体スペックだけなので、いきなり最強ー、とかは無理なんですけどね」
「ぬか喜びだった」
別に最強目指してたわけではないけどちょっと拍子抜けする。
さて、肝心の祝福とは一体なんなのだろうか?
「化け物としての維持コストが免除されます」
「維持コストの免除」
「はい♪」
それって実質なにもないのと同じなのでは?そう問えば、それがそうでもないらしい。
その化け物は力の維持に一定周期で一定の魂を必要とするのだが、その一定の魂、というのが問題らしく。
大体本人1に対し必要な魂は10、酷い時にはもっと掛かるその維持コストは、向こうの世界の住人がそれを解消するためだけに、あれこれ思案するレベルで深刻な問題なのだとか。……うーん闇深案件。
「なので、最初からその維持コストが掛からない貴方は、向こうに行ったら周囲から羨望の眼差し間違いなしなのです」
「はえー」
なるほどわからん。
なお、ちゃんと聞くところによると。
その維持コストは実は代替品であり、俺の祝福は正しい形で維持コストを払ってくれるもので、一般的な化け物達の維持コストが掛かりすぎているのは、使っている燃料が代替品だからなのだとか。
「ただまぁ、向こうにも既に正式な維持コストを払ってる子が何人かいますので、別に貴方が初めてというわけでもないんですけどね」
「ぬかに漬かってる気分なんですがそれは」
なおその後ぬか漬け気分どころか、異世界という混沌の坩堝に漬けられるはめになる俺なのだった。
どっとはれ。
「そんな、嘘、嘘でしょ……、こんなやつが、覚醒者………?」
そんな事が転生前にあったのだとニャルさんに話したら、すっごい顔になって踞ってしまった。
それもこれも彼女が「アンタはね、この世界で他人を犠牲にしなければ生きていけない体になってしまったのよー?」なんてニャルニャルするからである。
他人をからかうとき、貴方もまたからかわれているのだ、なんて宣ったら脛にパンチが飛んできた。
……意外と元気そうだなと呑気に思う俺なのだった。
飼殺の檻・裏[re]・一つと九の呪いの話 @arkfear
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