『11』

 傘の日らしいと言うことに、スマートフォンをスクロールしていると気が付いた。カーテンの付いていない窓から外を見る。別に雨は降っておらず、曇りなので傘をさすような人はいないだろう。


 私は小さく「嘘つけ」と呟いた。


 スマートフォンの電源を落とす。きっと傘の日は、日本特有のものなのだろうなと思う。まず六月が雨季であるという大前提のもとに付けられているのだろうし、尚且つ海外圏の方は傘をささないと聞いたことがある。どちらかと言えば、日本人は名前を付けるのが特に好きな種族なのも起因しているのだろう。文字の種類が多いからかもしれない。


 部屋を見渡す。精々ワンルームだが、棚、床、作業台、所狭しと絵の具が置いてあった。この絵の具は全て別の色だ。私の目にはもう殆ど見分けがつかないが、ラベルを見れば縹だとか紺だとか、いろいろな名前が記されている。


 私は大きく、部屋に満ちるように溜息を吐いた。


 名前を付けるからこんな量になる。名前を付けるから、色々なことを思い出してしまうのに。

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数字文学 彌(仮)/萩塚志月 @nae_426

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