第2話 情報収集

 位置情報を更新。人工衛星との接続がオフラインの為、周囲の地形より現在の位置と周囲の地図を作成。


 位置情報 Noah デザストル王国

 王宮前 商業地区と居住地区の間


 重要施設の選別。

 デザストル王宮 冒険者ギルド 酒場

 居住地区


「これからの行動に最低限の情報が必要です。居住区から情報を収集します」


 Noahは最初の情報を集められそうな施設を選び出し、それらにまつわる情報を収集するために居住区に住んでいるであろう住民に話しを聞くことにする。


「すみません。話しを聞かせて下さい」


 Noahは道を歩く人に話しかける。突然の質問に人は驚く。


「え!? あ、あぁ。何か?」


「この辺りでこの国、又は周辺地域の情報が得られる場所はありますか?」


「はぁ……ギルドや酒場に行ったらいいんじゃないかな。あそこ辺りなら大抵の情報は集まると思うよ。望む情報があるかどうかは分からないけど」


「ありがとうございます」


 Noahはそう一言で感謝を述べると男性の前から去っていった。

 重要施設のも詳細情報を更新。

 これらの施設は情報を集めるのに適している。


 Noahは作成した地図を頼りに最初に冒険者ギルドへ向かった。冒険者ギルドは二階建ての木造建築で二階が図書部屋となっていた。


「冒険者ギルドに到着。空間情報を更新します。内部情報、休憩所に四十八名、受付カウンターに二名、カウンター奥の部屋に二名、二階の図書部屋に書物が約三千冊。

 これより、ここから即座に回収可能な情報を全て記録します。

 魔物、魔法、武器、素材、伝承、歴史、宗教、衣食住、国家、政治、地理、魔化学、生物、気候、伝説。

 これら全ての情報を記録しました」


 Noahは冒険者ギルドに入った瞬間に異世界に必要な全ての情報を記録した。ただ全ては書物に書かれた過去の出来事であり、現在の出来事、特に自然災害に纏わる情報は無かった。


「引き続き、人間から情報を聞き出します」


 Noahは冒険者が酒を飲み散らかす休憩所のテーブル席に行き、体格のしっかりした一人の冒険者に話しかける。


「こんにちは。私はNoah。最近、世界を襲う自然災害について何か情報をお聞かせ下さい」


「あぁ? なんだてめぇ。急に話しかけて何を吐けだと?」


「最近起こる災害についてです。なにか情報をお持ち……」


「おいコラ。人に何かを聞きてえんなら渡すもんがあるだろうが……あ?」


 Noahは冒険者に首を掴まれる。


「敵対反応を検知。相手の感情ステータスは激怒。更なる刺激を与えれば自身の機体が損傷する確率大。現在の状況を変える行動を選択します。

 言葉でなだめる行動による結果は小と推測。

 実行。相手を傷つけないように無力化」


「何をごちゃごちゃ言って……ぐあぁっ!? いで、いでででで! な、なにすんだぁああ!!」


 Noahは自分の首を掴む冒険者の腕を片手で掴み取り、力で引き剥がした後、思いっきり肩の関節を捻り上げ、折れる寸前にまで持ち込む。


「そこから無理に体を動かすと貴方の体重では反動で、肩の関節が外れる恐れがあります」


「分かった! 話すからやめてくれえぇ!」


「分かりました」


 Noahは相手が降参したと判断し、捻り上げる腕を解いた。が……。


「そういうとでも思ったかぁああぁ!!」


冒険者は自分のテーブル席に置いてあったビールジョッキを掴み、勢いよくNoahに殴りかかる。

 Noahはその瞬間に行動を計算する。


(相手の敵対行動を検知。緊急回避します。ここからの反撃は相手を更に刺激する可能性中。実行、相手の無力化。結果、反撃不可能)


 Noahは冒険者のジョッキ攻撃を体を後ろに退け反らせて回避した瞬間に、脚から高電圧電流を走らせ、冒険者の脛を一度蹴り、バランスを崩した所で、片手のジョッキを奪い取り、その手首を掴むとぐるりと骨を180度回転させる。


「ぎゃああああぁっ!!? ああぁ……いてぇ、いてぇよぉ……」


 相手の無力化に成功。しかし一つ失敗してしまった。人間の精神力の脆さを見誤ってしまった。

 無力化は成功したものの、あまりの激痛で冒険者は床に転げ回り、うずくまり、泣きそうな表情で口を聞かなくなってしまった。


「情報の収集に失敗。ターゲットを変更します」


 そうしてNoahは他の冒険者に近づこうとするが、野次馬となった冒険者はNoahの接近に半分逃げるように離れていく。


「全体の感情ステータス、恐怖、戸惑い。これ以上の情報収集は不可能と断定」


 そう言ってNoahは冒険者ギルドを後にしようとすると背後から怒号が吹きおこる。


「何事じゃ! クソ野郎がぁ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る