第三章使命

第八話3-1争い




 デリーはミコトの為に知っている限りのお茶を探してきた。



 「聖女様、不学な私の知る限りのお茶を持ってまいりました!」


 デリーはそれをミコトに差し出す。

 ざっと見た所十種類近くあるようだ。

 ミコトはその一つ一つを手に取りその内容を形状を記憶する。



 「お茶とはこれほど種類があるのですね。お茶としての種類はこれで全部でしょうか?」


 「いえいえ、私の様な勉強不足の者が知っているのは、ほんの一部分です。聞けばお茶と言うモノはその数が天の星ほどあるそうです」



 デリーはややも興奮気味にそうミコトに言う。

 ミコトはデリーの言葉を聞き脳内に「お茶」というカテゴリー用のファイルを作成する。



 「では味の検証をしながら記憶をしていきましょう。すみませんがこのお茶を一つづつ入れてもらえますか?」


 「はい、聖女様」



 使用人が早速デリーからお茶を受け取りお茶を入れる準備を進める。

 デリーはお茶を入れる様子を見ているミコトを見て何故かおかしくなってきた。



 「聖女様は色々なものにご興味がおありですね?」


 「資料不足では物事を演算するのに正確な答えを導くことは難しくなります。可能な限り資料を集めると言う事は理に適う重要性があると思いますが?」



 ミコトのその言いにデリーはしばし呆けてしまった。



 「聖女様はまるで賢者の様だ」



 「賢者とは何ですか?」


 真顔でデリーに質問をするミコト。

 その顔を正面から見てしまってデリーは硬直する。

 

 自分と同じ年くらいのミコトは驚くほど美しい。

 深い緑色の瞳に写されると吸い込まるるような錯覚を感じる。

 流れるような透明に近い青い髪、真っ白な肌、まるで弧をかいたような眉毛に小さく可愛らしい鼻、そしてその下には思わずドキリとしてしまうほどの瑞々しいほんのりとピンク色に染まる唇がある。



 ごくり。



 思春期を迎え、間もなく成人になるデリーにとってこれほど美しい女性を目の当たりにする機会は少ない。



 「デリー?」


 「はっ!? す、すみません聖女様! 賢者とはあらゆる知識に精通した者を指します。知識は勿論魔道にも精通しており国の知恵袋として我々に知恵を授けてくれる存在です」


 「アーカイブの様な者ですね? 一度私もアクセスしてみたいです」


 「あ、あーかいぶ? あくせす??」



 この世界の言葉ではないミコトのその言葉にデリーは反復しているが何の事だか全くわからない。


 と、デリーが悩んでいると最初の茶が入った。



 「聖女様、一つ目のお茶が入りました。どうぞ」



 侍女がそう言いながらミコトの前にお茶を差し出す。

 ミコトはまず香りを、次に色を、そして最後にゆっくりとその味を確認するかのように味わう。



 「芳醇な香りに対して後味はさっぱりとしている。なかなかに印象深いお茶ですね?」


 「次のお茶になります」


 侍女に出された次のお茶をミコトは同じく確認しながら味わう。

 こうしてデリーの持ってきたお茶を全て一口ずつ味わった。



 「デリー、ありがとうございます。お茶とは同じ作成方法なのにこうも味や香り、色合いに差が出るものなのですね」


 「お役に立てた様で幸いです。時に聖女様はどのお茶がお好きですか?」



 デリーはこれだけ色々と持って来たのだからミコトの好みを知ろうとした。

 しかしミコトは首をかしげしばし沈黙してそれからデリーに向き直り言う。



 「お茶の定義について一端は理解しましたが自分の好みがわかりません。全て基本は同じお茶の葉を発酵させた作りですので」


 「は、はぁ‥‥‥」



 ミコトのその答えでデリーは少々肩を落とし、こっそりと侍女たちに笑われてしまう。

 これだけあれば一つくらい好みの物もあるだろうにと思ったのだが。

 しかしデリーは同時にミコト好みのお茶を探し出すまで、またいろいろと探そうと思う。


 そう彼が思った時だった。


 

 コンコン


 

 扉をノックする音がした。

 

 「どうぞ」


 ミコトが返事をすると扉が開きザイナックが入って来た。

 ザイナックは静かにミコトの前まで来て挨拶をしてから真剣な表情で話し始める。



 「聖女様、戦が始まります。女神様を否定する輩、ホリゾン帝国が動き出しました」




 その言葉にデリーは冷や水を浴びる想いをするのだった。

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ミコト-異世界召喚されたAI少女の唄- さいとう みさき @saitoumisaki

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