第3話

デパートについたわけだが

「むらさき、人が多いけど大丈夫か?」

「ちょっと怖いです」

袖をキュッと掴みながら後ろに隠れる

「むらさきちゃん一緒に回ろっか、そっちのほうが怖くないで

しょ?」

コクコク

「まずどこ行く?俺も服見たいんだけど」

「んー、やっぱりシロクロかな」

デパートで一番でかい服屋はここしかないってぐらいでかい服屋だ

「結月、俺女の子の服とかあんまりよく分かんないからむらさきの服選んであげてくれない?」

「何言ってんの?もちろん鹿沼くんも選ぶんだよ?そっちのほうがむらさきちゃんも嬉しいと思うよ」

腕を捕まれぐいっと店の中へ引き込まれた

「なあ結月女の子ってどんな服がいいんだ?」

「鹿沼くんがいいと思ったものが女の子のいいだと思うよ?」

「俺が思ういいか。」

ふとむらさきの方を見ると昔の事が頭に浮かんだ、

確か小学生の時夏休みに熱海の爺ちゃん家に行った時だったと思う

あれはたしか山の近くの竹に囲まれた小さなお寺だったと思う

「ヒロくーん、もう帰っちゃうの?」

「だってもうすぐ暗くなるじゃん」

「ふーん」

「――は帰らなくていいの?」

「私はいいの」

「まあいいや、またあしたも来るよ」

「うん」

彼女は神社の鳥居まで俺を見送ると

「またね」

と言ってまた神社の中に戻って行った

「――い、おーい鹿沼くん?」

「あ、うん、なんだ?」

どうやらぼーっとしていたみたいだ

「服決まった?」

「あ、うん」

右手のかごにはシンプルな白のワンピースが入っていた

「へ~結構わかってるね」

「何がだよ」

機嫌が良さそうにむらさきを呼びに行く結月の手には何やら嫌な予感を感じさせる物を持っているような気がしたが気にしないでおこう。

「むらさきちゃん試着行こっか」

「じゃあ俺は自分の服見てくるから」

試着室の反対方向へ行こうとしたが

「何言ってんの、自分で選んだ服見ないでどうすんのよ」

腕を掴まれ引っ張られ試着室へつれていかれた

「さあむらさきちゃん、私達の選んだ服着てみて」

「う、うん」

むりやりと言っても文句を言われなさそうなくらい強引だけど大丈夫かな

「ハナ、終わったよ」

「じゃあカーテン開けてもいいよ」

シャッっとカーテンが開き現れたのはショートパンツに半袖のパーカーを着たむらさきだった

「おお、結構かわいい」

「でしょ?」

嫌な予感はただの予感だったようだ、多分

「じゃあ、鹿沼くんの選んだやつも着てみて」

「うん!」

楽しんでくれているようで安堵の息が漏れる

「良かったね楽しんで貰えてるようで」

「ああ」

しばらく待っていると

「終わったよ」

と同時にカーテンが開く、そこには純白のワンピースをまとったむらさきが立っていた

「へー結構いいじゃん、この2つで決まりだね」

「そうだな、結月はどうする?せっかく来たんだし服見ていくか?」

「私はいいかな、この前行ったしね」

そして自分の服を適当に選んで会計を済ませると結月があることに気づく

「あれ?むらさきちゃん耳は?」

「耳と尻尾は隠せるの」

と得意げに言うが俺と結月は戸惑いながらも納得する

「そ、そうか」

家に帰り明日の準備をし、一段落したら結月から連絡が入った

「もしもーし鹿沼くん、宿の連絡先教えるから予約しといてくれない?」

「いいけど、なんか忙しそうだな」

「あぁうん、まあね」

何やら電話越しにガサゴソ聞こえてくる

「時間かかりそうか?」

「ちょっとかかりそうかな」

「そうか、なら予約しとくから終わったら一応連絡してくれ」

「うん、わかった」

電話を切り暇そうなむらさきに尋ねる

「なにか食べたい物あるか?」

「ん〜」

ソファの上でゴロゴロし枕をだき抱えながら悩ましい顔をしている。

「あ!あれがいい!」

「どれだ?」

「今日お店で見た、えぇと…おむらいす?」

「いいな、今から作るよ」

エプロンを腰にかけて準備を始める

「手伝ってもいい?」

モジモジしながら小恥ずかしそうに、聞いてきた

少し戸惑ったが

「あぁ、いいぞ」



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余命一ヶ月で恋に落ちた猫 阿久津 @NiaMAME

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