ピアノのこ

バブみ道日丿宮組

お題:女同士のピアニスト 制限時間:15分

ピアノのこ

「夢は見れたかい?」

 赤い猫が少女に問う。

「夢が叶ったならそれは見れたっていってもいいかもしれない」

「夢がないならそれは見れないっていってもいいかもしれない」

 少女は同じ顔をした双子。

 ただ瞳の色が違う。

 赤と、緑。

 あまり自国で見られない瞳。

 姿はおとぎ話に出てくるようなお姫様のように可憐。

 そしてふんわり。

「なら、今回の契約は完了したってことでいいのかな?」

 少女はお互いを見合う。

「そのための演奏」

「このための伴奏」

 少女たちは1つのピアノの椅子に並んで座る。

 その隣に猫は飛び乗った。

「なら、最後に一曲お願いしてもいいかな。それでこっちの仕事は終わりだから」

 少女は頷く。

 して。

 すぐにメロディが奏でられる。

 それは濛々しく、猛々しく、悠々しく、清澄でもあった。

 少女たちがいる場所を考えなければ、これはきっと素晴らしいコンサート会場であっただろう。

「さて音楽がある間に片付けるよ」

 猫がピアノの周りに倒れてるものへと飛び降りる。肉が砕ける音ともに赤の色が舞う。周囲には人であったものが大量に転がってる。

「真っ赤」

「真っ青」

 少女の服は元は青。今は赤。そして両方。青でもあり赤でもあった。

「今日のごちそうはかなりの量があるからね。長くひいてもらえると助かるよ。咀嚼音は耳障りだからね」

 猫が口をあけると、それは象のように広がった。

「大きい」

「小さい」

 少女は猫のために音楽を奏でる。

 それは自分たちがしたことの後片付け。または自分がすることの前奏。

 何度かのピークをピアノで奏でると、猫が鍵盤へと飛び乗る。

「そろそろ終わりでいいかい? 次の夢に行こうと思うんだ」

 少女は頷く。

「いい」

「悪い」

 猫は笑う。

 再度口をあけ、少女とピアノを飲み込みその場を去った。

 残ったのは赤。真っ赤な床。真っ赤な空。


 そしてピアノの音。

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ピアノのこ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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