ゆかたとピカタ

おこあ

ゆかたとピカタ

爽やかな風。

近頃では珍しい。


窓の外の校庭では調理実習をしている。


「キャー」

クラスの女子の声。


窓の外を見るとイケメンと持て囃されている佐々木が卵を割っていた。

それだけだ。



放課後、その佐々木が掲示板を見ていた。


通り過ぎようとしたその時、

「なあ、お前、夏祭りに来てくれないか?」

佐々木が声を掛けてきた。


意味が分からなかった。


無視して行こうとしたが、「お願いだ、この通り」

そう言ってタッパーを指し出してきた。

中を開けるとピカタがぎっしり詰まっていた。


私はつい「よくてよ」と言ってしまった。


夏祭り当日、約束はしたが待ち合わせをしていなかった。


「おーい、こっちだよ」

佐々木の声、振り返ると浴衣姿の佐々木がピカタの屋台に居た。


「ごめん、あの時は焦って屋台の事を言うの忘れてたんだ。」

私はつい「よくてよ」と言ってしまった。


あれから3年、私達は一緒にピカタの屋台をやっている。


佐々木は今でも言葉が足りていない。


「ごめん、さっきソースって言ったつもりだったんだ。」


やっぱり私はつい「よくてよ」と言って許してしまう。

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