第8話

世界から世界へ、

次元を渡るモノたちのことを

“渡り人”と呼ぶんだ。

「“わたりびと”?」

そう。由縁は諸説ある。

渡り鳥のようだからとか、

次元を渡る者には

羽根が生えているからだとか。

「その人たち、どこにいるの?」

そこら中にいるよ。

目に見えるモノから目に見えないモノまで。

彼らは“魂のカケラ”なんだ。

「“たましいの、カケラ”?」

そう。

形を持たずに漂う存在を

“泡魂”

形を持つ存在を

“意志魂”と言う。

「“あわだま”…と、“いしだま”?」

うん。

おまえもよく、空想するだろう?

そのとき、

魂のカケラは体を離れて、

世界を渡っているんだよ。

それが“泡魂”。

「それは、目に見えるモノ?」

“泡魂”は基本的には見えない。

たまに何かに宿って姿を借りることもあるから、そうゆうときは、会えるかな。

「じゃあ、“いしだま”は?」

強い意志が形を得たのが“意志魂”だ。

目に見えるし触れられる。

それこそ、本当にそこに居るかのように。

「じゃあ、生きてるのとおんなじだ。」

そうだね。だけど、

本当にそこに生きているわけじゃない

たとえ魂がどこに居ても、

彼らの命は“本来あるべき場所”にある。

「あるべき場所って?」

現実、という居場所さ。

“意志魂”は命から生まれていく。

“意志魂”を生み出す命のことを、

僕らは“魂根”と呼んでいる。

「“たまのね”?」

そう。命と魂は深く繋がり合っているんだよ。

「繋がり合うってどういうこと?」

うーん。そうだな。

つまり、

命と魂は世界を共有しているんだ。

…ちょっと難しいかな。

「うん。難しい。」

ややこしくて計り知れない話だけど、

それは追々、わかっていけばいい。

一つ言えることは、今この瞬間も

数多の意志が次元を渡り、

世界を股にかけいるってことだ。



誰が言っていたのか思い出せないけど、

知識として俺の中に残っている記憶を、

思い出していた。

知識や経験はちゃんと君の中に生きている。

そう言っていたベルベットの言葉の意味が、

少しずつわかってきた気がする。

世界を渡る魂のカケラが“渡り人”なら、


今の俺は、なんなのだろうか。

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とある世界の願い @harido-ryo

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