第203話 車笠

「いやぁ、この兜作っちゃうとか、天才としかいいようがない」


そう言って、好花が指差した先には、真っ黒い兜がおいてある。


装飾品など、派手なものは何一つついていなく、ただの黒。しかし、その黒は、黒光りしていて、キラキラと光を反射されていた。


「この車笠はな、鉄砲の弾や弓矢が当たると、兜がクルクル回るようになっているんだ。


兜自体が回ることによって、物が当たった時の衝撃が少なくなるんだ」


「そんな細工が施されてんの!?


最強やん」


「まぁな。最近は鉄砲を使ってくる戦が増えたからな。


鉄砲の弾があたったときは、たとえ、兜や鎧をつけていても衝撃がすごいんだ。


それを少しでもなくそうと思ってな」


好花は景虎の説明を聞きながら、兜を間近でじっくり見ていた。


それは、まるで宝石をみるかのようなキラキラとした輝かしい目つきで、じぃっと見ていた。


「好花はさ、そういうとこにも興味があっていいよな。


普通、兜に興味もたんて」


「そうかな?


まぁ、うち、変人だから」


「いやいや。そういうところ、好きだよ」


「えぇー、照れるー」


二人は笑い合った。


「好花は今回も戦に行くん?」


「もちろん!


お供させてください!」


「じゃあ、また美少年役な」


「いえっさー!


よしっ、うちも用意しないとっ」


二人は、戦の準備にとりかかった。

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