第196話 火の手

 葛山城にて。


「殿!


葛山城に火の手が上がりました!」


「なに!?


すぐに火を消せ!」


「やっておりますが、怪我人もかなりの数。


人数が追いつきません!」


「なんとしてでも火を消せ!


景虎様の援軍はどうした!?


まだ来ないのか!?」


焦る落合。


「雪のためにまだ着いていないようです。


戸隠・飯縄両神社の宗教勢力も雪中のため行動が制約されているとのこと」


「くそ!」


西・北の両方面からの支援を断たれた葛山城。


雪が混じる風が吹雪となり、悲しくも火をどんどん巨大化させた。


葛山城に火が次々とうつり、燃えていく。


「殿っ!」


落合のところに梓が現れた。


素敵な着物も、すり減り、ところどころ、すすがついている。


「梓。ごめん。


俺……みんなを守れなかった」


そう言った落合を梓は抱きしめた。


「隣は、よく頑張りました。


ここまで、私をお姫様にしてくれてありがとう。


そばにいてくれてありがとう」  


「俺のほうこそ、ありがとう。


おまえが妻でよかった。 


梓がいなかったら、みんなもここまで頑張れなかった」  


「これから、どうしますか?」


梓は、抱きつきながら上目遣いで落合を見た。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る