第187話 梓の役割

葛山城にて。


「景虎様には、急報は送ったから後は援軍が来るのを待つだけだ」


落合は、家臣たちにそう言った。


自分自身も甲冑を着て、支度は済んでいる。


「放てー!」


弓隊長の掛け声で、弓隊から一斉に弓が飛んだ。


その弓は、葛山城に近づいてくる敵兵たちにぐさぐさ刺さる。


「これでもくらえ!


石大量転がしっ!」


葛山城を登ってこようとしてくる敵兵たちには、石を大量に転がした。


その石は斜面を転がるので、かなりのスピードで当たるのである。


その石に当たった敵兵たちは、石と一緒に斜面を転がる。


「山城をなめんなよ!」


葛山城には、覇気があった。


その覇気は、きっと


・葛山城が山城であるということ


・景虎様が必ず援軍を出してくれるということ


・景虎様と一緒に作った城を絶対に守り抜きたい


という思いがあったからなのだろう。



梓は、正室なのだから、待っているだけかと思いきや、部屋にはいなかった。


「籠城戦は、体力と気力が大事。


食べ物には限りがあるから、今のうちからプラン練りましょう」


「はいっ!」


そう声をかけたのは梓だった。


梓は、厨房に行って、指示を与えていたのだった。


その指示にみんなも従い、テキパキと仕事をする。


厨房に行ったかと思えば、次は怪我人がいる場所へと向かった。


そして、自ら怪我人の手当てをする。


「梓様、申し訳ねぇ。


奥方様に手当てしてもらえるなんて……」


「何言ってるの。


あなたは、この葛山城みんなのために戦ってくれたんだから、手当てするのは当たり前よ」


梓は、手慣れた手つきで、手当をする。


「ありがとうございます」


怪我人は涙を流しながら、感謝を述べた。






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