第186話 裏切り

葛山城にて。


落合の家来たちは、急いで籠城の準備している。


城の外では、馬場の大軍が大量に見える。


綺麗に整列し、ずらーっと並んでいる様子だ。


落合の重役家来たちは走りながら、口々に話している。


「てかさ、なんで、この葛山城に敵が押しかけてくるまで、気づかなかった!?」


「葛山城中腹に、静松寺ってあるやん?


そこを通じて


落合一族の落合遠江守、落合三郎左衛門尉が寝返ったらしいよ。


あいつらはさ、敵がきたら、のろしや伝令で葛山城に連絡するって約束だったろ?


連絡がきたら、俺らは援軍をよこして、一緒に戦うっていう流れだったよな。


でも、寝返ったから、それができず、近くにくるまで、分からなかったってことさ」


「寝返った!?


最悪。あいつらのせいじゃん。


なんで裏切るかなぁ」


「ほんとそれな。


まぁでも、葛山城は、山城だし、こんなところ、攻めてきても到達できないでしょ」


「だよな。


景虎様たちと俺らの殿様が一緒に作った城が、破られるわけないよな。


援軍が来るまで待つか」


「おう」


弓兵たちは、すべに弓を敵たちに向けていた。


門は開けられないように、出入り口をでかい石で塞いだ。


落合は、城の外を見ていた。


「真っ向から戦っても勝ち目はない。


でも、籠城しても援軍はくるのか?


こなかったら、どうするんだ?」


1人、自問自答していた。


梓は、その様子を不安そうに見ていた。


梓は正座をし、腿の上に手を置いていたが、不安のせいか、腿の上の着物をぎゅっと握りしめ、落合を真っ直ぐに見ていた。


【参考文献】

・南原公平 著『信州の城と古城』 しなのき書房 2009年

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