第184話 小田切

景虎と好花の元へ、定満が駆け足でやってきた。


「先ほど、報告がありました。


村上さんの支族である、小田切駿河守幸長(おたぎりするがのかみゆきなが)が援軍を率いて、葛山城へと入っているとのこと」


「村上さんの仲間か!」


「はい。村上さんいわく、北信濃の土地を取り返してくれたのは、紛れもなく景虎様であると。


そのお返しがしたく、この度援軍をよこしたとのことです」


「ありがたいな」


「ほんとそれ。


村上さんに貸し、作っておいて良かったね」


「貸しと呼べるほどのものでもないがな。


この大雪で援軍に行けないことを悔やんでいたが、少しは望みが持てたな。


これで、どうにかもってほしいが」


しんしんと降り続ける雪を見ながら、景虎はため息をついた。



「いま、小田切さんたちは、葛山城にいるのか?」


「そうみたいですよ。


城主落合さんと一緒に戦うため、籠城しているらしいです」


「え!?


籠城!?」


「はい。村上さんも既に向かっているとのことで。


数日耐えられれば、こちらの勝ちです」


「籠城戦か。


この真冬の寒い中で、籠城戦はきついな。


籠城戦は、体力もそうだが、気も確かにもってないとだしな。


この曇り空の天候の中、鬱になりやすいからな……」


景虎の目も沈んで見える。


「おいっ!


景虎が元気なくしてどうするよ。


大雪で動けない今、祈るしかないよ」


「だな。毘沙門天に祈るか」


寒い中、景虎と好花は、毘沙門堂に向かった。

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