第179話 信玄の真顔

武田信玄は、真顔になった。


「ま、まさか。


長尾景虎さんじゃあるまいな?」


好花と去って行く景虎の後ろ姿をみて、信玄は呟いた。


「信玄さん。


まさかのまさかです。


彼、越後の長尾景虎です」


「まじかよ。


道理で、波長が合うわけだ。


なんか初めてな気がしなかったんだよな。


前々から知っているかのような。


そんな気がした」


「信玄さんと景虎さん、川中島で何度も戦ってますもんねぇ。


景虎さんにお礼言っておきました。


川中島の戦いをしてくれるおかげで、信玄さんに会えるって」


「おいっ。


そんなことねぇよ。


川中島なくても、逢いに行くに決まってるやん」


「え?


そうなの?」


「そうだよ。


こんなに美人で可愛くて、一緒にいて楽しいやつをほっとく人があるものか」


信玄は、諏訪姫のほっぺたをむにゅむにゅした。


諏訪姫は、それに逆らわず、むにゅむにゅされるがままになっている。


「景虎さん、やっぱり良い男だったな。


徳の積み方が違うわ。


男でも惚れそうになったわ」


「ちょっとぉ。


浮気しないでよね」


「冗談だよ。


よし、俺らも上原城に帰ろうか」


「うん」


こうして、2人は手を繋いで、上原城に帰っていった。

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