第168話 清酒

「諏訪姫!


このお酒、高級な酒じゃないですか!


すごく透き通ってる」


景虎は興奮して、盃に入ったお酒を眺めている。


「さすが、景虎様。


良く分かりましたね。


にごっているお酒も好きなんですけど、景虎様と好花さんと飲むなら、と思い、高いお酒を用意しちゃいました」


「さすが、諏訪姫。


あまり、手に入らないお酒なのに。


ありがとうございます」


諏訪姫が持ってきた酒は、どぶろくではなく、清酒だったのだ。


「では、乾杯」


諏訪姫、景虎、好花の3人は、清酒を大事そうに飲んだ。


と思いきや、


景虎は、最初の一口で1杯飲み干し、2杯目に突入した。


「景虎、あんまり飲みすぎないでよ」


「わかってるよ。ほどほどにしておく」


好花は、あきれた顔で、景虎に清酒をついだ。


「私にも、ついでもらえませんか?」


「え! 諏訪姫……ペース早くないですか!?


うちなんて、まだ一口しか飲んでないですよ!」


「お酒好きなもので」


「諏訪姫、見かけによらずですね」


好花は、苦笑して、諏訪姫にもついだ。


「景虎様にこんな可愛い子がいたなんて、知らなかったわ」


「あー。好花の存在は内緒にしておいてくださいね? 


口外無用で」


「もちろんです。


で、好花さんは、未来から来たんですか?」


「そうなんです。


お腹を刺されて、そのまま意識を失って、気づいたらこの世界に」


「なるほどなるほど。


私も似たような感じです。


私の場合、


少し前に


私の父、諏訪頼重と武田信玄の戦いがあったんです。


その戦いに私も巻き込まれてしまい、どっかの男にお腹を刺されたんですね。


で、好花さんのように意識を失って、気づいたら、未来にいました。


何年後かは、分からないのですが、かなり様子が違っていたので、未来であることは未来です。


服装も違ったし、建物も全く違いました。


城なんて、どこにもなくて、どこにいるのか、見当もつきませんでした」


「ちなみに、服装ってこんなのでしたか?」


好花は、筆をとり、葉っぱに服を書いた。


着物ではなく、洋服を書いた。


「そうです!


これです!


あと、背中に荷物みたいなの背負ってました。


でも、丸裸ではなくて、布の袋みたいなやつの中に入れて、それを背負ってました」


「あー。リュックですかね」


「リュック?」


「はい。未来では、風呂敷ではなく、リュックというものに入れて、物を運ぶのです」


「へぇ。風呂敷はなくなったんですか?」


「なくなってはいません。


使う時もありますが、普段はリュックとか、カバンっていうものに入れて、運びます」


「そんなものがあるんですね。


勉強になります」







筆者の戯言



戦国時代のお酒は「どぶろく」のようなにごり酒が基本でした。


しかし、清酒もすでに存在していたんです。


もちろんですが、清酒は高級品。


多く流通するお酒といえばにごり酒だったと言います。


どぶろくよりも、清酒のほうがアルコール度数は高いです。


そんな清酒を飲んでいる、3人。


酔っ払っちゃいますね。

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