第165話 高野山到着

 長尾家臣団と大熊朝秀が戦っているころ、景虎と好花は、高野山に着いていた。


「京成さーん!


お久しぶりですー!」


好花は、にこにこ笑顔で手を振っていた。


それに気づいた京成も、真面目だった顔がほぐれ、にこにこになった。


「好花様! 景虎様!


お久しぶりです!


長旅ご苦労様でした」


「やっぱり高野山は高いから登るのに一苦労でした」


「そうですよぉ。


うちなんか、疲れすぎて、途中何度も諦めかけました」


「ほんとだよ。


好花なんて、疲れたぁとか言って歩くペースめちゃ遅くなるんですよ。ったく」


「でもね、京成さん。


景虎、怒ってると思いきや、荷物持ってくれたり、歩くペース合わせてくれたりして、優しかったんですよ。


ね? 景虎っ」


好花は、いたずらそうな目で景虎を覗き込む。


「おいっ、やめろ。恥ずかしい。


京成さん、すみません。


お恥ずかしい話を」


「いやいや、いいんですよ。


仲睦まじくて、何よりです」


「それで、まだいるんですか?


タイムスリップしてきた未来人」


「いますよ!


景虎様がいらっしゃるって聞いてから、


絶対帰らないように見張っておきましたっ」


「見張るって……ま、まさか、乱暴なことしてないですよね?


監禁とか……」


「まさか!


安心してください。


では、こちらです。


ついてきてください」


京成の後を追って、景虎と好花はついていった。





ある部屋の前で京成は立ち止まった。


「失礼します」


そう言って、部屋の戸を開けた。


部屋に入ると、1人の人間が座っていた。


吸い込まれるような瞳、艶やかな髪。


肌は、雪のように白く、儚いような。


しかし、その人間が放つオーラは威厳があり、ただものではないような雰囲気を持っていた。


女なのか、男なのか。



景虎と好花を真っ直ぐ見て、にこっと微笑む。


「初めまして」


部屋に、心地よい声が静かに響き渡った。




 

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