第162話 ぶつかり合い

 越中口で、長尾勢と大熊勢はぶつかり合った。


長尾勢は、主君の景虎が不在だが、得意の鑓(やり)でどんどん大熊勢を押していた。


「おい! 景虎様が戦にきてねぇってほんとか!?」


「朝秀様。


とても言いにくいのですが、それが本当なのでございます」


「ちっ。


景虎のやつ、俺なんか相手にするほどでもないってか?


ふざけんな!」


朝秀は、眉間にしわを寄せ、目は怒りのあまり充血している。


「くそ!」


「報告します!


長尾勢の攻撃が凄すぎて、すでにこっちに向かってきています!」


「なに!?


いくらなんでも早すぎないか!?」


「弥太郎を始めとする重臣たちがかなりの勢いで倒しまくっていて。


意気込みが、なんか違うんですよ」


「ったく!


しゃあねぇな!


景虎にも会えねぇし、悔しいがここで死んだら全て終わりだ。


よし、武田のとこへ行くぞ!」


「承知しました!」


こうして、大熊朝秀は、武田信玄のいる甲斐へと向かった。


信玄は、大熊が謀反を起こす前から、大熊と内通していた。


大熊の弱みを握って、うまく口車に乗せたのだろう。


武田の情報網は、とても優れていて、そういう気の隙間を迅速に読み解き、隙いる。



大熊朝秀は、景虎の家臣から、信玄の家臣へと変わったのである。




筆者の戯言


大熊朝秀がいた、箕冠城についてです。


箕冠城は、箕冠山の山上にあります。


標高は、237メートルです。


東に大熊川、西に小熊川が流れ、おのずと天険の要害をなしています。


山容も美しく頂上から高田平野を眼下に遠く日本海をも望むことができる絶景の城。



山頂を中心に土木工事をほどこし防御機能を強化している城。


中世の山城の姿を歴然と残す特色ある遺構の多い城跡です。



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