第155話 下平吉長

「で、下平吉長は誰なん?」


弥太郎が聞くと、定満は答えた。


「下平吉長は、千手城の城主です。


下平吉長と上野家成は、上田を巡る領地争いを起こしているんですけどね、


なんと、2年もそのゴタゴタが続いているんですよ。


天文23年(1554年)から弘治2年(1556年)にかけてですかね。


景虎様のところにも、両方から書状が来ていたんですけど、


両方とも、上田がほしいからどうにかしてくれ!


というような、身勝手な内容でね。


お互い、一歩も譲らないんですよ」



「うわ、そんな要求が何度も何度もきていたら、それはうざいですな。


景虎様に頼まないで自分たちでなんとかしろっ!って思っちゃいますな」


景家は、定満の話を聞きながらそう言った。


「あと、実乃さん、あなたが大熊さんと仲悪いのって、この下平吉長と上野家成が上田を巡る領地争いをしているのとも関係がありますよね?」


実乃は、苦笑いをして、罰が悪そうな顔をした。


「そこまで、お見通しでしたか。


そうです。関係あります。


実は、下平さんを味方しているのが、大熊さんで、


上野さんを味方しているのが私なんです。


最初は、下平VS上野だったんですが、いろいろあり、


下平+大熊VS上野+私(実乃)



となってね」


「うわー。


景虎様はさ、家臣たちが喧嘩してると、武田とか関東を相手に戦どころじゃなくなるからやめてくれって、ずーーっと言ってますよね?


実乃さんは、古株なんだから、よく知ってるはずですよね?


そんな実乃さん自ら、味方同士で戦っちゃってるなんて、最悪ですよ?


ほんと、反省してくださいよ?」


朝信は、かなりキレてて、いつも以上に語尾もするどくなっていた。


「何してんだろうな。


ほんと、バカだよ……」


実乃は、肩を落としてしょんぼりしている。




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