第153話 朝秀と実乃

柿崎景家が「追いかけるか?」と言った時、使者が部屋に入ってきた。


「今、政景様より使者が参りました。


政景様が既に景虎様を追いかけているとのこと」


「え!? 早!


さすがすぎるな」


「政景さんがうまくやってくれることを願おう」


「だな」


「じゃ、俺たちは春日山で待機か」



一同がふぅと深い息をついた。



「あのー、待機ということなら、実はわたしにも景虎様が怒ってしまった原因があるんです」


「え!? 実乃さんも!?」


みんながびっくりして、実乃を見ている。


「はい。大熊朝秀(おおくまともひで)さんとの関係です」  


「あー、あの人かー。


あの人、俺苦手なんよね」


弥太郎がつぶやく。


----------------------------------------------------


筆者の戯言タイムっ


ええ!?!?


大熊朝秀って、誰やねん!


って思っている方もいらっしゃるでしょう。


説明しますっ!


大熊朝秀さんは、景虎様の父の時代から長尾家に仕える重臣の一人です。


重臣なのに、なんで今まで出てこなかったん!


と思っている方もたくさんいると思います。


なぜ出てこなかったのか。


実はね、この頃の景虎の重臣は、2派に分かれていたんです。


A 大熊朝秀率いるチーム


B本庄実乃率いるチーム


実は、もともと朝秀と実乃の仲が悪く、事あるごとに反目していたんですね。


だから、その下となる家臣も2派に分かれて対立していたとも言われます。


2派の原因となったのは、あの長尾家の家督相続なんです。


ご存じのように、景虎には長尾晴景(ながおはるかげ)という兄がいて、


最初に家督を譲られたのは、このお兄さんの方でしたよね。


しかし、病気がちの兄は


景虎に家督を譲りたいと考え、


隠居して弟(景虎)に家督を譲ったという経緯がありましたよね。



この時に、


A朝秀は、晴景派


B実乃は、景虎派


だったんです。


まぁ、景虎が家督を継いだ後は、


両者とも景虎に仕えていたわけですが、


その時からずっと、その確執が埋まる事が無かったんですね。


ただし、一方で、この謙信の家督相続の際には朝秀自身が景虎擁立に尽力したという説もあるので、


あくまで、諸説あるうちの一つの可能性という事ですが。



筆者の戯言以上ですっ☆


---------------------------------------------



「でなー、朝秀さんとは、ずっと気が合わなくて会うたび会うたびに衝突を繰り返していたんよな。


景虎様から「仲良くしろ」


と採算いわれてたんだけど、なかなかできなくて。


この間も、激しい口喧嘩してしまった」


「あー。そいえば、俺は、あんまり朝秀さんチームと話したことないわ」


景家は、思い出したように言った。


「俺らはさ、同じ景虎様の家臣だけど、なんか実乃さんチームと朝秀さんチームで分かれてるよな。


お互い干渉しないし、話さえもしない。


実乃さんが代表して話してくれてるというか。


ま、結局口論になりがちなんだけど」


「景虎様てきには、みんなで仲良くしてほしかったんだよ」


「たしかにな。


最近、よりその確執が深くなってきたもんな」


「うーん。そうだね」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る