第144話 まつえ

 1週間後。


鬼小島弥太郎とまつえが対面する時がきた。


そこには、景虎と好花もいる。


「ねぇ。私さ、まつえさん、見たことないんだけど」


好花は、景虎にこそこそ話す。


「あー、そうだったかもな。


あんまり表舞台には出てこないからな。


でも、いつもずっと春日山城にいるよ」


「え!?


ずっといたん!?


なのに、見たことないなんて。


忍者か何か?」


「まぁまぁ、これから自己紹介してくれるだろうよ」


「う、うん」


好花が不安そうにしている横で、弥太郎はそわそわしている。


「よし、まつえ入ってきてくれ」


「いやいや、景虎。そんな小さい声で言っても聞こえないよ。叫ばないと」


と、好花が笑った瞬間、天井からにゅっと顔が出た。


「ぎゃっ!!


何事!! 誰!? 不審者!」


好花は、景虎に飛びついて目を丸くしている。


「あ、驚かせてしまってごめんなさいね」


そう、天井の人は言い、床にシュタッと降り立った。


「私、まつえと申します」


「ええ!


あなたがまつえさん!?!?」


「はい。私、女武者なんです」


「お、おんなむしゃ?」


好花が問いかけると景虎が代わりに答えた。


「実はな、春日山城には、女武者隊がいるんだよ。


普段は、料理作ったり、掃除したりなどの春日山城のお世話係をしててくれる。


時に、諜報活動をすることもある。


俺たちが戦で春日山城不在の時は、留守番役として、守ってくれる。


まつえは、俺が幼い時から側にいてくれて、なんでもできるんだぞ。


しかも、かなり強い。


弥太郎、まつえと腕相撲してみ」


「いやいや、景虎さん。いくら強いからって、俺には勝てませんよ」


そう言いつつも、弥太郎は、腕を出す。


「では、失礼します」


そう言って、まつえは、弥太郎と手を絡めた。


「じゃ、いくぞ」


まつえと弥太郎の腕相撲大会が始まった。


「え、俺、精一杯力入れてるんだけど。


なぜか、動かない」


弥太郎の腕がより盛り上がるが、決着はつかない。


そして、徐々に弥太郎の手が下に沈んでいく。


「そろそろ、決着つけちゃいますね」


まつえは、静かに言い放ち、弥太郎の手を床につけた。


「え。まつえさん、最強」


好花は、唖然とした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る