第141話 赤ちゃん 卯松

「そいえば、景虎様のお姉さん、赤ちゃん産まれましたよね?」


「そうそう。俺たちが戦に行っている間に生まれたんだよな。早く顔を見に行きたいな」


「ですね。赤ちゃんの腕、ぷにぷにしたい」


「弥太郎は触っちゃだめだ。お前が触ると赤ちゃんの骨、折れそう」


「おい。朝信さん。なんだよそれはっ!


お前の方こそ、赤ちゃんの前にいるだけで、赤ちゃん全力で泣いちゃうよ」


「なんだとーっ! 


俺は赤ちゃんの前では、にこにこ笑顔で振る舞うもんねっ!」


朝信は、そう言って、全力の笑顔を作る。


「えーっ!


朝信さん、笑顔かわいい」


「好花さん、やめてくださいよっ。


かわいくないですからっ!」


「うわ、朝信さん、照れてやんの」


「照れてないっ」


そう言いつつも、朝信の顔はうっすら赤く染まっていて、照れ隠しをしていた。



「赤ちゃん、名前は何て言うんですか?」


実乃が景虎に聞くと、


「卯松(うのまつ)だと。男の子だって、喜んでたわ」


「ほほぅ。いま、坂戸城にいるんですか?」


「そうそう。甥が増えると、嬉しいものだな」


「そうですね」











筆者の戯言


この赤ちゃんは、後の上杉景勝のことです。


弘治元年(1555年)、坂戸城で、景勝は生まれました。


父親は長尾政景、


母親は、景虎の姉 仙桃院です。


仙桃院の二男として生まれた景勝。


景虎の甥にあたり、幼名は卯松(うのまつ)と言いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る