第135話 五箇条の誓紙

 法螺貝が辺り一面にこだまし、長尾勢武田勢両者の諸将が動きを止める。


「ちっ、終わりかよ」


北条高広は、物足りなそうに呟いた。


法螺貝は、戦終了の合図であり、諸将たちは、自分の陣地へと引き下がっていった。


「今回もまた進展はなかったですな」


「だな。武田にうまく食い止められたな」


実乃と朝信は、馬に乗って陣地に戻りながら話していた。


「まぁ、強行突破するほうが不利だからな。この戦」


「ですな。この戦、思い切った行動ができないのがモヤモヤするけど、しょうがないよな」






この戦から1ヶ月ほど後の、8月21日にも戦闘はあったが、両軍は特に進展もなく、対峙していた。





時は過ぎ、



10月。



「みんな!


4月から半年もよく俺についてきてくれた!


田植え、稲刈りの農繁期がまるまる含まれていたにも関わらず、ここまでありがとう!


本当に助かっている!


北信濃の人々も、我らに感謝している。


越後に戻ったら、それ相応の褒美を皆に渡す!


約束する!


それでな、あともう少し川中島で対戦を続けたい。


あと少し、残ってくれる者はいないか?」



景虎は、諸将の前で堂々と立ち振る舞い、優しい眼差しで問いかけた。



すると、次から次へと兵士たちから声があがる。


「私たちにやらせてください!」


「景虎様のためなら、いつまでもついていきます!」



その声に、景虎は応じた。


「みんな、ありがとう!


今から残ってくれる者は、『五箇条の誓紙』を書いて、提出してほしい。


この紙には、誓いの言葉を書いてほしい。


信玄に絶対勝つぞ!!!」



「おぉ!!!」


景虎の言葉に心動かされ、みんなが残ることとなった。


配下の武将たちは、五箇条の誓紙に誓いの言葉を書き、提出した。


長尾勢の結束は一段と高まった。

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