第133話 市村の渡し

「よし、いけぇ!!!」


景虎が叫ぶと、北条高広(きたじょう たかひろ)が馬を操り、全力疾走で駆けて、市村の渡しを通り抜けようとしていた。


市村の渡しは、犀川を横断する大事な橋である。


高広は、景虎の恩義に報いるため夢中だった。


「高広様、かなり力が入ってますね!」


「当たり前だろ。


ここで負けたら景虎様に顔向けできねぇもん。


何か、武功を取らないと」


高広は、駆けながら側近たちと話した。


いくら、武田に騙されたからといって、主君を裏切った罪は、高広に反省をさせているようだ。


「市村の渡しに、たくさんの兵がいるぞ。


あいつらを散らしていかないと、向こう岸には着けないぞ」


「ですね。


どうしますか?」


「蹴散らすしかないだろう」


高広は、市村の渡しに突進し、次々に兵を蹴散らした。


蹴散らされた兵たちが、犀川に落ちていく。


「へっ、ざまーみろだ。


俺様に刃向かおうとするから、こうなるんだ」


犀川に落ちた兵らを見ながら、不適な笑みを浮かべている。


「覚悟っ!」


武田方の足軽たちが襲ってきても、片手にある刀、一つだけで蹴散らしている。



これをみて、


こいつ闇あるな、いや、ただ心がブラックなだけか、と側近たちは思っていた。



蹴散らしたおかげで、高広勢は、市村渡しを突破することができた。

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