第111話 根本大塔

 京成は、歩きながら景虎たちに話す。


「平安初期、816年ですね。


ここらへんは、まだ人の手がほとんど及んでいませんでした。


なぜなら、ここは、標高900メートルの山上だからです。


長年の願いであった真言密教の修禅道場としての建立を高野山で果たした空海は、それまでの日本にはない規模の山岳寺院を造営しました。


空海が築いた荘厳かつ雄大な天上都市がこの高野山なのです。」




京成の話を聞きながら、景虎たちは高野山のシンボルである根本大塔へ行った。


「でっかい赤!」


「でっかい赤ってなんだよ、弥太郎。


ったく、小学生か!」



「だってさ、根本大塔、でっかいし、赤色なんだもん」


弥太郎が思わずそう言ってしまうのも無理はない。


根本大塔は、49.5メートルもあるのだから。


非常に大きな建造物である。


「これはですね、真言密教を象徴する塔なんですよ。


ちなみに、根本大塔は、多宝塔形式の建物なんです」


「多宝塔形式?」


好花が京成に聞く。


「はい。寺院建築のうち仏塔における形式のひとつです。


一般に、平面が四角形の上に平面が円形の上層を重ねています。


四角錐形の屋根が見えますよね?


そして、屋根が二つありますよね?


こういう作りを「多宝塔」と呼称しています」


「なんだか難しい。


でもたしかに屋根は二つありますね!」


好花は、じーっと根本大塔を観察している。




「では、根本大塔に入りましょう」


「京成さん!


まさか、この階段を登るんですか!?」


「好花さん。その通りです。


登れなかったら手を貸しましょうか?」


「いえ、大丈夫です」


景虎たちは、階段を登り、根本大塔に入っていった。








「でけぇ仏様だ!」


「弥太郎!


でかい声を出すな」


実乃が弥太郎をこついている。


「目の前に見える仏様が大日如来です。



真言密教の中心的な仏様です」


京成の言葉を聞きながら、みんなは真剣な眼差しで仏様を見ている。


大日如来の前には、大きいお花が飾られている。


目はあいていて、みんなを見下ろすように見える。


「あれ?


大日如来の周りにも如来像がいますね」


「さすが、景虎様。


良くお気づきで」


「その周りの柱にも何か仏様が描いてあるな」


「そうなんです。


周りの柱には十六大菩薩像が描かれています。


さすが、景虎様、よく気がつきますね。


真言密教では、大日如来は宇宙そのものである。という考え方をします。


つまり、水の一滴、花びらの一枚、風の一吹きに至るまで、全てが大日如来である。


という教えです。


そして、大日如来の周りの四体の如来像は、そんな大日如来の働きを具体的に示しているんです」


「そうなんですね。


勉強になります」


朝信も京成の話に食いついている。






筆者の戯言ー!


今回の話は少しばかり長かったですね。


疲れましたよね。


ですので、


歴史なんてどーでもいいという方は、すっ飛ばしちゃってくださいね!!




大日如来の周りの四体の像。


それぞれ、意味があります。



どんな意味があるのか、気になった方、いませんか!?



向かって右手前の


『阿閦如来(あしゅくにょらい)様』は、


欲望、煩悩が迫ってきても決して心を動かさないという性質を表す仏様。



左手前の


『宝生如来(ほうしょうにょらい)様』は、


心の中に本来備わっている宝・仏の心を呼び覚ましてくれる仏様。



左奥の


『観自在王如来(かんじざいおうにょらい)様』は、


全てを正しく、見通す眼で迷える存在をあまねく見つけて救い出す仏様。


この仏様は!阿弥陀如来ともいうんだって。




最後に右奥の


『不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)』様は、


仏の悟りを得て、その教えを体得する喜びを表す仏様。





それぞれ、意味があるんですね!



以上っ!


戯言に付き合っていただき、ありがとうございました!


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