第109話 密談

「少し話したいことがあるんですが、お時間ありますか?」


景虎は、廊下で京成を呼び止めた。


「いいですよ。


お部屋で話しますか」


2人は、小さな部屋に入り、腰を据えた。


「あなたは、気づいていらっしゃったのだろう」


「具合が悪くて寝ている姫のことですか?」


京成は、静かに言葉を出した。



「高野山は女人禁制のはず。


俺があいつに無理を言って変装させたんです。


だから罰は、あいつではなく、私が受けます」


景虎は、深々と京成に頭を下げた。


景虎の顔から汗がたらりと垂れる。


「景虎様、顔をあげてください。


そんな、罰だなんて。


受けてもらおうとも思っていません。



ただ、他のお坊さんたちには黙っておいた方がいいですね」



「なぜ、俺たちをかばってくれるのです?」


「景虎様は、義の厚い男だと聞いています。


信州や関東の武士たちがあなた様に助けを求めれば、見返りを求めずに助けにいく。


そんな噂を聞いておりました。


私はそれを聞いて感動したのです。



この乱世、自分の利害を気にして行動する武将しかいないと思っていましたから」



「なんか、恥ずかしいな」


「景虎様は、必ずこの乱世を正してくれると信じています。


私は少しでも景虎様の力になりたいのです」



「京成さん。ありがとう。


俺に何かあったら、あなたに頼っていいってことか?」



「是非。


お力添えします」



景虎と京成は、堅く握手をかわした。

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