第108話 薬

「お邪魔します」


景虎は好花を抱えてお坊さんたちが住んでいる屋敷に入った。



「では、ここに寝かせてください」


お坊さんは、畳に布団をしいた。


「あなたの名前を聞かせてもらってもいいですか?」


実乃は、お坊さんに聞いた。


「私は、京成(けいせい)と言います。


高野山で修行をして20年になります」


「京成さん、こいつを助けてやってください。


よろしくお願いします」


景虎たちは深々と頭を下げた。



「承知しました。


まずは、腕の傷の毒をとらんとですね」


京成は、好花の袖をめくった。


「あー、これはひどい。


化膿してますね。


この方、よく今まで耐えていましたね。


傷のとこに薬塗りましょう。


この薬は、怪我をした時に重宝されている秘伝の薬なんです。


あとは、飲み薬も飲ませましょう」


京成は、好花の頭を少しだけ上げ、水と一緒に薬を口の中に入れた。


「高野山秘伝の薬を飲んだので、もう大丈夫です。


しばらく様子をみましょう」



「京成さん、ありがとうございます。


俺たちもここにいていいですか?」



「もちろんです。


薬、追加のもの持ってきますね」


京成が立ち上がり、景虎に耳打ちした。


「この方、女子(おなご)のように細くて白くて美しい腕でした」


耳打ちすると、京成は、部屋から出て行った。



景虎の顔は、こわばっていた。

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