第88話 辻が花

 藤の花が生き生きと描かれている染織物の前で、好花と景虎が話していると店から店員が出てきた。


「この染織物は、『辻が花』という染色技法なんですよ。


かなり人気のものとなっております。


絞り染めを基調として、描き絵や刺繍などを併用したものなんです」


「この藤の花びらの周りは、染められずに白くなってますよね?


どうやって作っているんですか?」


「これは、まず生地に下絵を描くんですね。で、その下絵に沿って生地を糸で縫います。


で、その生地を漬けて絞ると、その縫ったところが色がつかず、色の境目になるというわけなんです。


そうして、この色がつかない白い部分ができるんですよ」


「なるほど。


じゃあ、この藤の花のください」


「かしこまりました」



「え!? 


いいの?


こんなに高いのに」



好花はびっくりして、景虎をみる。


「堺に行った記念にな!」


「ありがと」



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