第77話 謎

「では、帰りますか!」


本庄実乃が言うと、景虎は文を懐から出した。


「実は、もう1人会う約束をしている人物がいる」


「え、そうだったんですか?


景虎様、誰ですか?」


景虎は文を出し、皆に見せる。


「三好(みよし)長慶(ながよし)殿だ」



「えー!!!」


一同が声をあげる。実乃は、恐る恐る景虎に聞く。


「あ、あの、幕府側と対立している三好ですか!?」


「そうだ」


「そうだ、って……。


三好長慶って、幕府の敵ですよ!?


足利義藤殿が朽木谷にいらっしゃるのも、


三好が幕府の実権を奪って、義藤殿を追い出したからですよね!?



それ、知ってますよね!?」


「あぁ。知ってる」


「ってことは、会った瞬間、景虎様殺されるかもしれないってことですよ!?」


「いや、それはない」


「なぜ、分かるんですか!?」



「それは、私が説明しましょう」


そう言ったのは、近衛晴嗣だ。


「いやー、もしやとは思いましたが、本当に会うことにするとは。さすが、景虎殿です。


景虎殿が、この荒れ果てた京で誰にも襲われなかったこと、不思議だとは思いませんでしたか?」


「確かに不思議だな。


京は、景虎様の領土じゃないもんな。


むしろ、敵地。


幕府側についている景虎様をよく思わない輩もたくさんいるはず。



なのに、誰にも襲われないのは、謎だわ」


鬼小島弥太郎は、首をかしげる。


「これにはね、三好が関係しているんです」


「えっ!?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る