第71話 ふなずし旨味

「ふなずし、外側の皮の部分、噛めば噛むほど旨味が出てきますね!」


実乃が言うと


「鮒寿司の酸味と、このお酒のスッキリしたフルーティなところが、合いますね!」


朝信は日本酒を飲みながら言う。


「そやろ? 美味いんやで」


と、晴嗣は、得意そうに言っている。





「好花も食べてみ?」


景虎が好花に食べることを促す。


「えー。においが……」


「においは、強烈だけど、口の中で噛むと美味いぞ」


「うぅ。


景虎がそこまで言うなら」


好花は、薄くスライスされたふなずしのかけらを一口食べた。


口に入れるまでは、好花もしかめっつらをしていた。



「あっ、なんか、なんだろこれ。


たしかに、噛めば噛むほど旨味がすごいね。


するめいかみたい


麹の香りが凄い」


部屋の中は、チーズのようなヨーグルトのような、麹の強烈な匂いが充満していた。



けれど、越後の人たちは、この旨味のとりこになったのだった。


好花は、日本酒をぐびっと飲んだ。


「あれ? 好花って、酒いける口なんか?」


好花は、景虎に向かって



にやっとした。

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