第70話 ふなずし食す

ふなずしを前にして、景虎一行は、全員顔をしかめている。


「これ、食べ物なんですか?


すごい匂いがするけど」


「食べ物です。


というか、貴重な食べ物ですよこれ!


高級品!」


「たしかに、現代でも珍味と言われているふなずしだが、ここまで匂いが凄いとは」


好花は、独り言のようにつぶやく。


「このオレンジのはなんですか?」


中皿には、刺身のように、ふなずしが綺麗に並べられている。


鮒が輪切りにされていて、切られたところが見えるようになっている。


「オレンジのところは、卵です。


卵こそ、貴重ですよ」


源十郎が、身を乗り出して答える。



「これね、お酒に合うんですよ。


騙されたと思って食べてみてください」


「そこまで言うのなら……」


景虎は、一口食べた。


みんなが息を飲む。


食べて、


「うまい!


これは、酒の肴になるな!」


景虎は、そう言って、日本酒を飲んだ。


「皆のものも食べてみぃ!


匂いは強烈だが、口に入れて噛むと美味いぞ」


こうして、みんな一斉に口に入れた。

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