第69話 ふなずしの登場

「景虎はんって、お酒好きなんですよね?」


近衛晴嗣(このえ はるつぐ)が景虎に聞く。


「お酒は、大好きですね」


「なら、お酒用意してありますよ!」


晴嗣は、お酒を景虎の前に出す。


「おぉ、琵琶湖の日本酒ですか」


「はい。ほな、景虎はんどうぞ」


晴嗣は、景虎に酒をつぐ。


つぎ終わると、景虎も晴嗣についだ。



「この酒は、すっきりしていてフルーティですな」


「そうなんです。


この酒にぴったりの肴があるんですよ。


源十郎(げんじゅうろう)、もってきてくれん?」


「ただいま」


進士(しんし)源十郎(げんじゅうろう)は、


足利義藤の側近の1人。


主に食事を担当している。



源十郎が中皿を持ってきた。


中皿には、何かが飾りつけられている。



辺り一面にチーズのようなヨーグルトのような匂いが漂う。


「う、なんですか、これ」


本庄実乃は、思わず顔をしかめる。


かなり匂いがきついようだ。


「これはですね、『ふなずし』です」

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