第66話 塚原卜伝の弟子

「あなたが義藤様ですか?」


足利義藤に抱きつかれて景虎は驚きながら尋ねる。


「いかにも! 私は、足利義藤だ!」



「元気なんだな、将軍様は」


「こら、弥太郎、失礼なことを言うではない!」


実乃は、弥太郎のお腹をつつく。



「いいのいいのー!


それよりもさ、誰か手合わせしてほしいんだけど!」



「俺したいな!」


弥太郎は、キラキラした目で返事をした。



「や、こいつだけはやめたほうがいいですよ。


こいつ、鬼とかなんとか言ってて


わけわかんないくらい変なやつですから!」


朝信は、止めに入る。



「いいですよ。


弥太郎さん、よろしく」



「へい!」






「弥太郎、わかってるよな!?


相手は、将軍様だぞ!?


手加減しろよ?」



「わかってるってー!」



「では、弥太郎、やろう」


手合わせが始まった瞬間、義藤の木刀は、ビュンと風を切り、あっという間に弥太郎の顔の前にきた。


「あれ? 強いっ」



弥太郎は、義藤の木刀を見て顔を強張らせる。



「御所様は、かの有名な大剣豪である、塚原(つかはら)ト伝(ぼくでん)様の


直弟子なんですよ。



ト伝様から刀の才能を認められているくらい強いんですよ」


そう言ったのは、義藤の側近の一人、細川藤孝(ふじたか)だった。




「え!?



あの塚原卜伝様の弟子!?



最強じゃん」



朝信は、開いた口が塞がらない。









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