関東にて。

「宗清（むねきよ）！　見ろよ、あれは越後の虎、長尾景虎が率いる軍だぜ！」

ある関東の武士がそう叫んでいた。

景虎が関東にくるのは、今日が初めて。

関東の武士は、珍しい訪問者に興味津々だった。

「田舎侍がきやがって。

おまえらがくるとこじゃねぇよって教えてやろうぜ」

宗清は、高らかに笑う。

「だな。俺が、景虎ってやつに、関東にくるのは100年早いって教えてやろう」　

　金井宗清は、景虎一向が桐生（きりゅう）筋から足利の八幡（足利市八幡町）を通るのを馬上から見下ろしていた。

それに気づいた実乃は声を上げる。

「そなたは何物か。

これほどの大軍を恐れず、我らを馬上から山下すとは無礼ではないか！」

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