第34話 金井宗清の嫌味
「そなたは何物か。
これほどの大軍を恐れず、我らを馬上から山下すとは無礼ではないか!」
景虎の配下が声を上げると、金井宗清は、強気の姿勢で返した。
「誰かと思えば越後の国主、長尾景虎殿の軍勢か!
私は、金井宗清である。
この山の番所を守っている!
景虎殿には、この地では、部下と味方の者達に狼藉を思いとどまるように!」
と、嫌味たっぷりに言い返した。
若造のくせに、関東にくるんじゃねーよ。調子乗ってんな!と、宗清は、思っていた。
「そこの金井とやら。
俺たちは、狼藉なんてしてない。
むしろ、狼藉しないように禁制まで出した。
だから、安心してくれい」
「あー。そうなんだ。
田舎侍だから、狼藉するのは当たり前かと思ってたわ」
金井がそういうと、好花は言った。
「なにあの挑発的な態度!
むかつくんですけど!」
戦国の世では、大軍が道を通るときは、馬から降りることが世の習いだ。
それなのに、宗清は、馬上から見下ろして言い放った。それだけでも、失礼だが、それに加えてこの挑発的な態度。
辺りは静まり返った。
「あははは!」
急に景虎が高らかに笑った。
「面白いが気の毒だな。
この景虎を挑発するとは。
いい度胸はしてるな。
よし、皆のもの!
そいつの始め、そいつの家臣らをも一人も生きて逃すな!!」
景虎の一言で、合戦が始められた。
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