第22話 上杉家の家宝

「関東管領の上杉様が私のような田舎大名に助けを求めるとは一体何事でございますか?」


「ど、どうか私たちを助けてくださらぬか。


私たちは、山伏に化けて、城を脱出してきたんだ。


その時に、代々、家に伝わる文書一式を入れて持って参った。


ということで、


手土産として、このすべてを景虎様にお譲りします。


どうか、我々の願いを聞き届けてくだされ」


上杉憲政が景虎の前に出したものは、上杉家代々伝わる重要な文書であった。


「関東管領の綸旨(りんじ)、


※綸旨とは、天皇の意を受けて発給する命令文書のこと。




上杉家の系図……


これは、ゆくゆく上杉家の重宝となる貴重な書物でございますぞ?



これはさすがに受け取れませぬ」



え!!


あれはまさか。


好花は、目を見開いていた。


あれは、上杉家の宝!


本物は初めてみるな。



興奮するなぁ!!!



もっと間近で見たい!



あとで、景虎に言って見せてもらおう。


好花は、部屋の端っこで、そんなことを思っていた。





「景虎様に受け取ってほしいのです」


「とりあえず、これらは、私の蔵で見張りをつけてしっかりお預かりします。



まずは、皆々様、あったかい湯に入り、温まってください」



「景虎様。かたじけない」



上杉憲政は、涙を浮かべていた。


「お華! 体が温まるように甘酒を持ってきてくれ!」


お華とは、綾のお世話係だ。いまでは、好花もお華にお世話になっている。



「なにからなにまで、申し訳ない。


突然の訪問なのに、なんて義の厚い方。


優しすぎます。


本当にありがとうございます」



上杉憲政は、深々と頭を下げ、お礼を言った。

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