第23話 200年前の話

「景虎様、報告します。


上杉様方は、風呂に入り、甘酒を飲み、ご飯もたくさん食べて


皆、お休みになられました」


本庄実乃は、やれやれといった表情で謙信に伝えた。


「ご苦労。ありがとうな」


「いやー、あの上杉憲政が越後に逃げ込んでくるとは」


「たしか、我ら長尾家の先祖は、もともと関東の出身だよな?」


「そーそ。長尾は、ずっと山内上杉家を支えてきたのだ」


「ま、200年も前の話だけどな」


「あの憲政は、景虎様の父上、為景様が下克上で討ち取った上杉顕定の孫じゃ」


「そうだよな。為景様の頃から、上杉と長尾はずっと対立していた」


「なのに、この大雪の中、景虎様を頼ってくるとは。


上杉憲政は関東に居場所がなくなったのではないか?」


「その可能性はあるな」


謙信家臣団は、ひそひそと話をしていた。


「ま、しばらくは、春日山で匿ってやるか」


ったく。上杉憲政は困ったものだ。


好花は思った。


突然訪問されるだけでも嫌なのに、その人をしばらく泊めてあげるとは。


なんという心の広い方。


さすが、義の男だな。


好花は、ますます謙信に惚れた。

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