第7話 お華

「じゃあ、俺は宴会の支度でもしてるわ。


後はよろしくな、綾」


「かしこまりましたっ!」


綾は、にこにこ笑顔を好花に向けた。


「好花ちゃんよろしくね」


「よろしくお願いします」


「お華も一緒に着物選び、手伝ってくれない?」


「もちろんです」


綾に言われて、好花に近づいてきたのは綾のお世話係りのお華だ。


にこにこしてて、顔は少しふっくらしている。愛嬌がいい。


「好花様、華と申します。なんなりとお申し付けください」


好花は慌てる。


「いやいや、うちなんかめっそうもないです。私の方がお世話になるのに。ご迷惑おかけして申し訳ありません」


「好花様は、もう長尾家の家族なんですよ。だから、迷惑だなんてことはありません」


好花は、感激していた。大好きな上杉謙信にも会えて、なぜか家族にまでしてもらえて。夢であるのは重々承知しているが、それでも嬉しい。


「好花さんの名前には、花という漢字が含まれていますよね。だから、着物は花があるのにしましょう! この着物なんてどうですか?」


この人は、漢字も分かる人なんだ。


教養がある。さすが、長尾家。


全体的に薄い紫色に染められている着物。


左肩には、淡い赤の花と白い花2つの合わせて3つの花が描かれている。その3つの花の周りには小さい花がいくつか咲いている。


その着物の下の方にもお花がたくさん描かれている。水色の生地の上にたくさんのお花。まるで、天の川のようだった。


「きれい」


好花は思わず声にしてしまった。


花びらがちらちらと舞っている様子が星の赤ちゃんみたいだ。


「これにしたいです!」


「うん。好花ちゃんに似合っている。紫、似合う。このお花もかわいい」


「景虎様も喜んでくれますね!」


「そうよ。景虎様が女の子を連れているところなんて初めてみたもの。きっと、嬉しがるわ。夜の宴会が楽しみね!」


綾がそう言った。長尾家は、なんてあったかいファミリーなんだろう。好花の心はどんどん晴れてきていた。


まぁ、あの男は、うちのことなんて、女として見ていないと思うが。


会えただけでも良いことにしよう。

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