第14話 大学生になるため、ズボンを買いに行く
あっと言う間に四月になり、学校が始まる時期になってきた。私はようやく現実を見始め、生きるための方法を考えようとしました。
しかしあまり考えるまでもなかったです。
どう考えても大学に行くのが一番楽な選択でした。
私はなんとか大学に行けるようになろうと考えました。
まず、服を買いに行かなきゃならない。とりあえず今持っているズボンが余りにも時代遅れだったので、これだけは何とかしなきゃいけなかったのです。
私は意を決して近所の服屋さんに買いに行きました。
その店には2年ほど前に一度だけ、兄に連れられて入ったことがありました。一人で入るのは今回が初めてでした。
なんか種類がいっぱいあるので、どこを捜していいのかもわからない。どうしようかと思いウロウロしていると、女店員さんが声をかけてきました。
店員「どういうものをお捜しですか?」
私「いや……普通のヤツを……」
店員「……ストレートですか?」
私「はあ……」
店員「サイズはお幾つですか?」
私「えーと…29かな……」
そして店員さんに勧められたGパンを試着しました。すそ直しもすぐにしてもらい、俺はそそくさと逃げるように店を出ました。
家に帰ってシャツを脱ぐと変な臭いがしました。冷や汗の匂いだったようです。普通の汗と全然違う匂いでした。
何はともあれ私はズボンを買いました。
私は勝利したのです。
だけどもう二度とこんな思いはしたくないと思いました。
私は大学生になりました。
自分が大学生になる姿なんて、全く想像もつきませんでした。
私は工学部に通いながら、この四年間の内に漫画を一発当てようなんて無茶苦茶なことを考えていました。
私は親が払う金のことなど全く考えてなかった。と言うか考えないようにしてた、というのが正しいのだと思います。
私の生涯において、一番後悔しているのはこのことです。将来のためじゃなくその場しのぎのために大学に行き、親に無駄な金を使わせてしまった。私にとっては生きるためだったかもしれない。けど、情けない。恥ずかしい。18歳にもなって、なんて幼稚な人間だったのだろうと思う。
人間になりたかった みち道 @shirohevi
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